自転車の東京と日曜日の幸福

閑静な住宅地にそびえる洋館

 久方ぶりに東京でサイクリング。あったかい天気の中、お堀端の幹線道路を飛ばす。日曜のせいか道もすいてて気持ちいい。
 東京に住んでた頃は郊外へ郊外へって感じで自転車での活動範囲を広げてったもんだけど、山手線の内側を飛ばす感覚ってのもいいもんだ。数年前に比べてずいぶんとサイクリストが増えた気がするけど、『自転車少年記』の影響もちょっとはあるんだろうか?
 途中で古本屋で道草しながら目指した場所は信濃町のギャラリー。閑静な住宅地にどどーんとそびえる洋館はかなりの迫力で、一瞬アートギャラリーとは思わずに通り過ぎていた。アートコンプレックスセンター東京ってとこなんだけど、やはり東京は違うなあとおのぼりさん気分をしみじみ味わうことができた。
 中も部屋数多くていろんなアート作品を堪能できて面白かった。 もともと内田かずひろさんの個展を見に来たんだけど、本来は一つの部屋でやってたのが好評につき会期終了後も展示スペースをかえて延長展示って感じで、廊下にずらっと作品が飾られていた。絵葉書を購入したんだけどたまたま近くにスタッフがおらず、別の部屋で個展をしてたアーティストの方に教えてもらったりなんかして。
 その廊下の奥に華やかな点描画が見えたので入ってみると、shioriさんというアーティストの作品群であった。もともとシニャック好きで日本の現代作家に点描を操る人はいないかなーと思ってた僕にとって、偶然こういう絵と出合えるってのは収穫である。特にボーダーコリーをモチーフにした作品は対象への愛と暖かな雰囲気に満ちていて、近づいたり離れたりしながらしばらく見入ってしまった。
 部屋の壁にそって歩きながら見とれていたら会場にいたお姉さんが紙コップに入ったお茶をくれた。きれいな人だったので受付嬢かと思ったら、他の人に作品説明をしてる様子を見ると作家さん本人らしい。別の部屋でも琴恵さんというアーティストさんに一通り作品解説してもらったし(鳥をモチーフにした線画&切抜きっていうのかな、不思議に落ち着く世界観の作品群だった)、立派な建物のわりに随分と作家と観客との距離が近い空間なんだなーと驚いた。また機会があったら来て見たい場所である。
 楽しいギャラリーにはすっかり長居してしまい、いい加減腹減ったなーと思いながら再び自転車に乗って走り出す。通りすがりにふと目を留めたラーメン屋で遅い昼食としたんだが、これがあたりで醤油ベースの濃厚スープや太い麺が上出来な上に一つ一つの具がしっかり美味い。ギャラリーといいランチといい、予備知識なしで訪れた場所でしっかり満足感を味わえるてのは嬉しいね。


 午後は新宿のカフェでオフ会。臍長い雑居ビルの2フロアをぶち抜きでカフェにしたような不思議な空間に長く居座り、のんびりとチェスを楽しんだ。みんな初対面だったんだけど、何時間も一緒に遊んだ後で一杯やったりすると結構うちとけて楽しいものだ。今後はチェス友はもちろん、木彫友まで増えそうだし。
 帰り道、サイクリングを楽しんでギャラリーでアートを満喫して美味いラーメン食ってカフェで寛いでチェスで遊んでタイ料理でビール飲んで、とても幸せな日曜日だったなーと思う。おまけに帰宅してみたら、こないだから足を怪我してたくろべーがだいぶ回復したようで、これまで引きずり気味だった右後脚も普通に使って夜の散歩に出てくれた。こういうことにも幸せを感じちゃうね。