ニシンとカワセミ

似てる? 寝てる?

 朝からいい天気。故郷では浅間山が噴火したらしいが、このあたりはきれいな青空だ。「こんな日に仕事なんかしてたまるか日和」である。
 朝のうちに洗濯と掃除でちょこっと働いただけで、午前中から近所の温泉へ。露天風呂があるのでほけーっと青空を見ながらあったまる。平日午前だからすいてるかと思いきや結構混んでて、老人ばかりじゃなくて20〜30代の堅気っぽい人もちらほら。なんの仕事してる人なんだろうなーと思うけど、そういうときはいつも自分のことは棚にあげている。
 風呂から上がる頃には昼飯時なのですぐそばの回転寿司屋へ。なにしろ仕事しない日なので入店するなり「生ビール!」と注文。このために風呂屋の給水機や自販機を見てもぐっとこらえてきたのだ。時計を見ればまだ午前。こういうのは贅沢な気がするね。
 ビールもしみじみうまいし、この店は平日ランチタイムは荒汁無料ってサービスがある。いろんな魚の骨回り皮回りヒレ周りがたっぷり野菜と似てある感じで、これを肴に飲むってだけでおツマミ無尽蔵の飲み屋って気分が味わえる。まあ豪勢な荒汁が無料でお代わり自由なぶんだけ生ビールは割高なんだけどね。
 あとここは地魚を中心に日替わりネタが充実してて、今日はニシンが出てたのも嬉しい。前に北海道の回転寿司屋で食べて以来、妙に好きなんだよねニシンの寿司。ニシン自体はいささか癖のある味だけど、酢によく合う上にビールにも合うんだなこれが。
 ビールに合うといえば、今日は白子の天麩羅ってメニューもあって、これなんかビールの肴にしろといわんばかりの料理である。揚げたてに塩振っただけの淡白な味が、ピルスナービールをひきたてることひきたてること。思わずビールお代わりしちゃったよ。


 そーやってだらだら飲み食いすること小一時間。外に出る頃にはほろ酔い気分で、ちょいと日向ぼっこでさましていくかーと、風呂屋と寿司屋の間にある公園へ。池のそばのベンチに座って読書しはじめたのだが……
 ふっと気づくと、すぐそばの標識に柿色のお腹がめだつ小鳥がとまっている。くちばしが長いのであれっと思ったら、水面を見つめていたそいつはぱっと宙に舞ってホバリング、そこから急降下して水面に突っ込んだと思ったら小魚を加えて舞い上がってきた。方向転換の際に輝く羽の瑠璃色──カカ、カワセミだー!
 僕はカワセミっていうと名前の通りに川にいるもんだと思ってたし、基本的に水の澄んでる渓流にいるもんだと思っていたが、こんな郊外住宅地の公園の汚い池にもいるんだなー。『カワセミの森で』の作者の芦原すなおさんは本物のカワセミを見たことがないと言ってたが、ぜひ連れてきてあげたいと思ってしまった。
 デジカメ持ってきてればよかったなーともつくづく思った。なにしろカワセミはしばらく僕の視界にとどまってたし、もう一度水面へのダイブシーンを見せてくれたのだ。せめてケータイ持ってりゃそのカメラで、と思ったが、今日は携帯してない。昨日プリペイドの期限が切れた&カードが見つからないってことで、今日はつかわないってことにしたのだが、失敗だったなあ。
 とはいえ、天気のいい昼下がりに公園の池で舞うカワセミは本当にきれいだった。宙に舞う宝石って言葉があったけど、その通りだと思う。それを目に出来ただけで、今日一日はオッケーって気がするよな。何がオッケーなのかよく分からんけど。


 午後は窓際の日当たりいいとこでくろべーと日向ぼっこ。木彫り像をバーニングペンで仕上げる作業をしてるので、モデルのくろべーが近くにいるととてもありがたい。BGMとしてダウンタウンのガキ使のビデオを流しっぱなしにしてたんだけど、こういう時間の過ごし方ってのもいいねえ。
 夕方のくろべー散歩の際、デジカメ持参で公園の池までいってみたが、カワセミはもういなかった。──ここに住んでるわけじゃないのか、昼時だけ活動してるのかどっちだろ。
 そして夕方にネットに接続してみたら、「電話が通じないけど大丈夫か」ってメールがきていた。──大丈夫なのですが、プリペイドカードが出てこないかぎり電話は不通でおいらはオフなのです。すいません。