熱いビールと熱い寄席

takeuchimakoto2004-11-13

11月13日(土)
 いい天気だ。沼津駅から沼津港へとのんびり歩き、タップルームっていうブルーパブへ。
 やはり目の前で注いでもらうビールは芳醇で気持ちいいし、ここでしか飲めないビールもある。近所にこういうパブスタイルのクラフトビール店があったらいいのだが。
 アメリカ人ブルワーのブライアン氏に話を聞きつつ奥の醸造所を見学、新たな設備投資計画や今後の展望なんかも教えてもらう。日本でクラフトビールを成功させた後にはアメリカで日本酒を造る事業を始めるってのが彼の夢だそうで、一番好きな漫画は『夏子の酒』なんだそうな。

 とても有意義な取材で勉強させていただいた後は新幹線移動。ビールの酔いも回り、リクライニングシートでぐーぐー寝てたら名古屋着。地下鉄乗り継いで大須へ。ふらっと名古屋までやって来たのは、大松のひつまぶしを食って大須演芸場の雷門祭りを観るためなのである。
 ウナギは確かに美味。──『図書館の水脈』の読者から、あれに出てくる鰻屋の店はどこかって聞かれたことがあるんだけど、あそこに書いたのは架空の店。あんな感じの感動が欲しい方は、この名古屋は大須の大松のウナギを食べてみてください。焼き方と味付けの技ってもんを堪能できます。

 うまいビールとうまいウナギをハシゴして、すっかり満足してから大須演芸場へ。「日本一客の少ない寄席」なんて言われてるので開演ぎりぎりに行けば平気だろうと思ってたのだが、着いてみて驚いた。客席はぎっしり満席、通路にはずらっと補助椅子が並んでそれも埋まりかけてるのだ。──今日が特別企画ってことじゃなかったら、場所を間違えたかと思うとこだった。
 おまけに、ただ混んでるだけじゃなくて客席の反応があたたかい。平均年齢高そうな客席だったのに、演者の一言一言にぱっと反応するし掛け声も結構とんでいる。これが名古屋のノリなのか?
 最初に一門揃い踏みの口上があったんだけど、獅篭と幸福、立川でいうところの志加吾と談号の二人が羽織り姿で高座に上がってる姿は感動的だった。形こそ違うとはいえ、僕にはなんだか二人の昇進披露みたいに見えたのである。二人は立川流を破門されて名古屋に流れたってことになってるけど、僕の目には立派になってるようにしか見えなかった。
 実際、彼らの高座も以前の印象とは全然ちがっていた。僕は芸について語れるほど落語に詳しくはないけれど、彼らが客席をうまいことあしらってその笑いを操ってる様はまざまざと見ることができた。定席の高座で毎日のように客前に出てる強みってこういうことなんだなーと、久々に彼らを見たおかげでよく分かった。いわゆる「板に付く」ってこういうことなんだなーと思いつつ、板は板でも獅篭がやったネタが「勘定板」だってんだから、実にどーもよくできた話だ。

 終演後に打ち上げに混ぜてもらい、さらに演芸場の楽屋に泊まらせてもらった。楽屋ってのは本来「祝儀出さないと入っちゃいけないとこなんだよ」ってことだったが、僕はそこに手ぶらで入った上に帰りには寿司折の手土産までいただいてしまった。我ながら、厚かましいにもほどがある。
 そんな中で、日頃愛読しているシカゴサイトの日記に登場する人々を生で見られたのも面白かった。芸人日記だから誇張して書いてあるんだろーと思っていたが、そんなこたあなくて、むしろ漫画家日記だからネームは簡潔になってたんだな。──そうしてお会いした方から早速メールをいただいたんだけど、返信アドレスが違ってるのかパソコンからのメールをシャットアウトしてるのか、僕から出した返信メールは届かないみたいです。申し訳ないですが、この場を借りてご報告まで。素敵な画像もありがとー!


 あと、プライドが高くて自らの信念にこだわり、熱っぽく語るって姿勢は、沼津の醸造家さんにも大須の芸人さんたちにも共通してた気がする。そういう人たちに触れるってえと、俺ももーちょっとしっかりしなきゃなあと思うのであった。