「おかわり」と「サニーサイド」と「鬼ごっこ」

カレーライフ ダウンタウンのガキの使いやあらへんで !! 1 浜田チーム体育館で24時間鬼ごっこ ! [DVD]
 昨日、『カレーライフ』文庫版の著者校正がどーにか終わった。
 どーゆー仕組みか知らんが、校正作業を真面目にやると普通の読書の何倍も目が疲れる。分厚い『カレーライフ』ともなればなおさらで、眼精疲労で頭痛までする。おかげで今朝はくろべー散歩の後で二度寝。起きたのは昼頃で、こういうのって久々だなーとしみじみ。
 しみじみといえば、『カレーライフ』の細かい内容はかなり忘れてたので、こんな話だったのかーと感慨深かった。自分のある種の傾向なんかも見えてきて、『ビールボーイズ』完成前に読んでおけてよかった。単行本と文庫本で2回校正をするってのも勉強になる。
 勉強といえば、僕は執筆時に「お代わり」と書いてたのを単行本校正で「お替わり」に直させられた覚えがあるのだが、文庫のゲラでは校正さんが「お代わり」の方が正しいのだと書いていた。こーゆーのって小学生の頃の漢字テストの終了間際みたいなもんで、しまいに何が正しいのか分からなくなってくる。もう言われるがまま。
 何が正しいのか分からんっていえば、他にもいろいろ。校正チェックで「インドで出てくる飲み物は決して冷えてません」といわれたけど僕は駄菓子屋にあるような冷蔵庫から出してもらった瓶コーラを飲んだ覚えがある。カルカッタの街に牛が歩いてるなんて書いてあるのはおかしいと「旅行人」編集長に陰口たたかれた箇所に関する校正さんのコメントは、「実際に歩いてるから問題なし」だそうで、正解はどうなんだかさっぱり分からない。
 文庫の校正さんといえば、作中に出てくる「サニーサイド・オブ・ザ・ストリート」というジャズナンバーの歌詞を調べて送ってくれたのがとても嬉しかった。この曲、僕は学生時代に自由が丘のジャズフェスタで知ったんだけど、年配の女性ボーカルが朗々と歌う様がカッコいいなーと思って使っただけで歌詞までは知らなかった。作中ではナキジンさんというおばあちゃんが昔の苦労を語った後、すかーんと明るく歌う曲になってるんだけど、初めて歌詞を見てみたら実に彼女にぴったりの内容だった。知らんで使う僕も僕だが、知らなくたってぴたりとおさまるあたりが創作の醍醐味だ。
 まあしかし、なにしろ英語のリスニング能力に問題があるもんで、僕はこの曲名をきちんと聞き取れてなかった。単行本では前置詞と冠詞を抜いて「サニーサイド・ストリート」なんて表記しており、台詞部分なのでそれでも問題ないっちゃないのだが、文庫本ではそれも修正。

 で、午後にその分厚いゲラを担当さんが取りに来た。「おつかれさまー」と言って差し入れてくれたのは『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』のDVDで、前に24時間鬼ごっこは最高だって話をしてたらそのDVD版を貸してくれたのだ。
 こりゃ嬉しいなーとばかり、夜は布団シアターでそのDVDを鑑賞。バカバカしくもすばらしい企画を大規模に実現した映像は、やはり大画面で見るのにふさわしい。目が疲れたらプロジェクターを消して「傑作トーク」のディスクの音声だけを聞いたが、これは映像抜きでも面白い。
 以前『「松本」の「遺書」』か何かで松ちゃんが“音声だけで通じる笑いの方が上等だと思う”とか書いてた気がするけれど、ダウンタウンの芸って本来は音声なのかもしれない。「ガキの使い」って番組が成功したのは、その音声芸に加えてテレビ的な映像もしっかりしてたからなんだなーと、今頃になって気づかせてくれた15周年記念DVDなのであった。

 あ、そうそう、『カレーライフ』の打ち合わせで聞いたとこでは、カバーや目次も専門の方々が鋭意製作中だそうな。おそらくこの文庫版が、最も作者の意図どおりに刊行される『カレーライフ』の決定版になると思いますので乞うご期待。──文庫版とは思えぬくらいの厚みと価格になりそうですが、この物語を気に入ってくださってる方には是非お買い求めいただきたいです。