風船爆弾と爆笑問題

takeuchimakoto2005-08-18

 取材仕事で埼玉県の小川町へ。
 朝から特急列車に乗って『少年時代』を読んでると、近くの席にいた家族連れの子供が飛行機だーと声を上げた。
 窓の外を指さしてる彼につられ、僕もそっちに目をやった。見れば遠くの空に銀色の丸っこい物体が浮かんでたのだが、それがすーっと水平に移動して何故か唐突に見えなくなった。
 目の悪い僕にはよく分からなかったけど、あんまり飛行機には見えない動き方だった。その子のお母さんも同じことを思ったのか、「あれは飛行機じゃないよ」とか言ってる。
 親子は物体の消えた方を眺めつつ「じゃあ何?」「うーん、風船かなあ?」なんて言葉を交わしてる。僕は黙っていたけれど、男の子に向かって声を大にして言いたかった。
「おい少年、今のはUFOだ! 宇宙人が乗ってるかは知らないが、なんだか分からんって時点で語義通りのUFOだ! せっかく不思議なもんを見たのに、風船なんて説明で納得するな!」
 まあもちろん、そんなこと言っても怪しまれるだけだから我慢したんだけれど、やっぱりあれはUFOだと思うなあ。


 小川町では町立図書館や女郎うなぎや麦雑穀工房などを訪れて取材。鰻重食って本読んでビール飲んでるだけじゃねえかって話もあるが、これも立派な仕事なのだ。
 詳しい内容は連載エッセイに書くとして、おそらく本文には入りきらないネタとして面白かったのは風船爆弾の展示。小川町の特産品の和紙が風船爆弾に使われてたそうなんだが、この和紙を貼り合わせるのに使ったのは蒟蒻糊で、それを作ってたのは小説家セキグチの親戚のお宅らしいのだ。
 こんなとこでリンクするもんなのかーと感心しつつ、今朝見たUFOも風船爆弾かもしれんと考えてみる。小川の女と岩舟の男の風船爆弾で繋がる恋愛小説なんて書いたら面白いだろうか。


 帰りがけ、新宿で降りて紀伊国屋本店に立ち寄る。笑うカドには―お笑い巡礼・マルコポーロ
 1階のお笑い本コーナーを眺めてたら僕の『笑うカドには』が並んでてとても嬉しかった。この本、えーかげんな本屋だと文芸コーナーとか小説コーナーばかりに並べられてて作者としては不本意だったんだけど、さすが紀伊国屋さんはわかってらっしゃる。
 小説コーナーには僕の小説がコンプリートされてたし、こういう本屋さんの書棚を見るとおいらも頑張らねばと素直に思える。……実のところ、オーストラリアに行ってた頃には転職しちまおうかなって思いもあったのだけど、こうしていろんなことに励まされて今日も書き続けております。
 てなわけで、嬉しかった勢いで紀伊国屋では爆笑問題の新刊を買って帰る。──そういえば、10年近く前に初めて『日本原論』を見つけて凄え面白いのが出たーと感動したのがこの売り場だったなあ。爆笑問題が読む龍馬からの手紙