『ドア・イン・ザ・フロア』と『ウィンドー・フォー・ワン・イヤー』

takeuchimakoto2005-11-06

 ジョン・アーヴィング原作の『ドア・イン・ザ・フロア』を見に、久々に恵比寿ガーデンプレイスへ。未亡人の一年〈上〉 (新潮文庫)未亡人の一年〈下〉 (新潮文庫)
 原作の『未亡人の一年』の序盤のエピソードのみを映画化したと聞き、どんなもんかなーと思ってたのだが、これが予想以上に良かった。『サイモン・バーチ』みたいに呆気なさを感じることもなく、『サイダーハウス・ルール』みたいに「映画自体はよくできてるけどメロニーがいないのは寂しいなあ」って思うこともなく、一本の映画としても小説の映像化作品としても楽しさを満喫できた。サイモン・バーチ [DVD]サイダーハウス・ルール [DVD]
 俳優陣の役作りもなるほどねーって感じだったし(テッドは著者写真のアーヴィングの面影に似せたのかな?)、写真とかスケッチとかメモ用紙とかの小道具によって文章表現を映像表現にしてる技が見事。色使いとか風景を切り取る構図とか、隙のない映画だなーとつくづく思う。
 一番感心したのは音楽というか音響効果で、中盤の盛り上がりとなるドタバタシーンのBGMには驚かされた。導入部で流れてたカーステレオの音楽とシンクロさせて軽快なヒップホップ風BGMで行くのかと思いきや、さあ修羅場だってとこで音楽は一点、弦楽四重奏とおぼしきクラシックが流れ始めたのだ。その優雅な音の広がりと映像で繰り広げられてる悲喜劇の相乗効果はなんとも味わい深かったなあ。
ホテル・ニューハンプシャー [DVD]ガープの世界 [DVD] 『ホテル・ニューハンプシャー』のコマ撮りとか『ガープの世界』のロビン・ウイリアムズの弾けっぷりとか、アーヴィング世界のコメディ性を表すやり方っていろいろあったけど、こういう手法もあるとは。ラストシーンの暗転+無音の効果もすごく不思議な余韻を残してくれたし、小説に映像と音が加わっていく創作過程って本当に面白いなあと思う。
 この映画でも『マイ・ムービー・ビジネス』みたいなメイキング本を読んでみたくなってしまったが、出るかどーか分からんからまずは『未亡人の一年』の再読かな。──僕は実のところ翻訳文体とか描写の多い文章とかが苦手でアーヴィング作品は好きなわりに読み進まないのだが、映画のヴィジュアルイメージと共に読むとリーダビリティーが上がりそうな気がする。マイ・ムービー・ビジネス―映画の中のアーヴィング


 ところで、原作が邦訳される以前、僕は『A Widow for One Year』を読み間違えて『A Window for One Year』だと思い込んでいた。ニューハンプシャーのイメージから漠然と高いところにある窓をイメージして、窓の眺めも一年の間に随分変わるもんなーなどと思ってたのだ。今回扉がフィーチャーされた映画を見て、高い窓じゃなくて床の扉だったんだなーとあらためて思っちゃったりなんかして。
 そんなわけで(どんなわけだ)、今日の画像は我が家の窓。一階の窓にしちゃあ割に高いところにあるが、くろべーは臆病なのか賢明なのか、覗き込んでも飛び降りるようなことはないみたいである。