多忙な上京と充実の鑑賞

takeuchimakoto2006-01-27

 今年初の上京。朝からご近所さんにくろべーを預けて駅へ向かう。
 いろいろ用事を片付けるついでに、行きたかった美術展・見たかった映画・従兄のタローさんのコンサートとハシゴする。絵画・映画・音楽と3つともハズレ無しで、なかなか充実した一日であった。


 まずは銀行でいくつかの手続きを片付け、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムでやってたポーラ美術館の巡回展。
 ポーラ美術館自体は箱根にあるんだけど、シニャックの絵を所蔵してると聞いていつか行ってみたいと思ってた。それが渋谷で見られるんだからラッキーである。
 巡回展ってことで展示されてたのは八十数点だったが、疲れずに見て回るのにちょうどいいくらいだったし、全般に明るく健康的な作品が多くてとても楽しかった。印象派前後の流れもとてもすっきりまとまってた上、僕の好きな新印象派の作品も様々に取り揃えてあるのが素晴らしい。
 シニャックの絵の斜め前にあったソファーで寛ぎ、のんびりと「オーセールの橋」って作品を眺めてるとしみじみ幸せである。前景でシルエットのように描かれてる人々は、それぞれ何をしてるんだろうなーなどと空想するのもシニャック作品の楽しみ方の一つだろう。


 その後は品川に移動、プリンスホテルで編集者さんに合流して仕事の打ち合わせ。その後はプリンスシネマで『THE有頂天ホテル』を鑑賞。
 三谷映画は劇場で見る主義だし、せっかくホテルの映画なんだからホテルの映画館で見るのである。僕はかつて結婚式の撮影のバイトでこのホテルに出入りしてたこともあるので、ちょいと感慨深い気分でホテルを描いた作品を眺める。ホテルってほんと、裏と表の顔があるんだよな。
 バイトについてはいい思い出ってなかったんだけど、すごく楽しくて幸せな映画のおかげで嫌な記憶についてもふっと懐かしくなったりした。それくらい素敵な映画だったし、緻密な構成を味わうためにもDVDで何度も見直したいものだ。
 2時間ちょっとの時間はあっという間に過ぎ去り、映画が終わる頃にはすっかり暗くなっていた。プリンスシネマってのはプリンスホテルにしちゃあ意外にカジュアルな感じの雰囲気の空間だったが、日が落ちると周辺は隣の水族館の関係で不思議なイルミネーションに彩られている。しばらく見ない間に品プリも変貌してたんだなーと思いつつ、その変貌ぶりもとても楽しく思えたのは映画のおかげかもしれない。


 そのまま夜の銀座に移動、高校生のロックバンド「黒猫一揆」の少年たちと合流して王子ホールへ。関西在住の従兄、笛の詩人ことタローさんが初の東京公演ってことで寄らせてもらったのだが、何故か高校生5名を引率していくことになったのである。
 で、このステージも素晴らしかった。世界各国の笛の音に、バイオリンとアコースティックギターとパーカッションが重なってとても心地よく響くのである。タローさんのMCが緊張気味にアップテンポだったり、歌舞伎座が近いせいか客席からあれこれ掛け声がかかったりってのもなかなか楽しい。
 やっぱり関西と関東じゃ客席のノリも違うだろうし、それを探りながら進行してるのかもしれない。後半になるにつれて全体の空気が馴染んでいくような感覚も面白いものだった。
 客席の手拍子とコラボレートする曲なんてのもあった。ただ一定のリズムを刻むのではなく、曲の展開を読みながら手を叩くタイミングをはかるゲームみたいな趣向になってるのだ。隣で見てたバンド少年たちが、その曲の時だけ5人全員前のめりになって椅子の背もたれから体を離してリズムをはかってるのが楽しかった。──ドラマーやベーシストにはリズムセクションの意地があるんだろうし、すぐに呼吸をのみこんで裏のリズムをとってたりするのもさすがである。
 終演後、演者のタローさんはもちろん、他の従妹や叔母ともあれこれお喋り。核家族そだちの僕は親戚関係の用事ってえとなんとなく億劫な印象を持ってたのだが、こういうコンサートのロビーで挨拶ってのはなかなか楽しいものであった。