夜明けの推敲と雨上りの修理

憎き雨雲

 夜明け前、寝床でふとアイデアが浮かんでむくりと起床。
 朝の5時前からワープロに向かって執筆。まあ執筆っていっても深い集中を要するもんじゃなく、昨日の午後にさくっと書き上げた短編の手直しなんだけど。机の前の窓からだんだん白んでいく空を眺めつつ働いてると、実際以上に充実感を味わえるもんである。
 布団でメモした事項を一通りクリアしてプリントアウト、その原稿を推敲してデータ修正、フロッピーに保存して階下へ。今度はパソコンでデータを開いてメールで送信。それからよーやくくろべーの朝飯と散歩。文字通り朝飯前の一仕事であった。


 帰宅後は僕の朝食、それからパソコンに向かって翻訳仕事。のんびり訳文をひねり出す間に洗濯もすすめ、階段のモップ掛けにも精を出す。なにしろ早起きだったので、物干しまで終えてもまだ10時前であった。
 外は気持ちよく晴れてるので、サイクリングにでも行こうかと思い立ち、サイクルウェアに着替えてロードのタイヤの空気調整。くろべーにはコングに詰めたパンの耳を与えて留守番を命じ、グローブはめていざ出発。
 長いダウンヒルを気持ちよく突っ走り、田舎道を快調に飛ばしていったのはよかったのだが、やがでトラブル発生。前輪のブレーキシューがリムにこすれる音がしたと思ったら、パキーンとスポーク切れの音。工事現場の近くですっかりこの感触にも慣れてしまったが、家から10キロ以上離れて近くに自転車屋もない場所では結構手痛い。
 その上、ひとまず大通りを離れようとカーブしたところでハンドル感覚がおかしいことに気づく。よく見りゃ前輪の空気が抜けかけてやんの。タイヤを調べたら2ミリほどのガラス片がささってて、どうやらスポーク切れの直後にふんづけちまったらしい。泣きっ面に蜂たぁこのことである。
 話はそこで終わらない。参ったなーと思ってるうちに風が強まり、空が急に暗くなったと思ったらポツポツと雨が降ってきたのだ。おまけに雷までゴロゴロ鳴り出して、こうもトラブルが重なるかねーと呆れ返る。自転車を置いて家に帰って車で取りに来るって考えも浮かんだが、ここから駅までと駅から家までが遠すぎるという八方塞がり状況である。
 修理に取り掛かる気力も失せて、近くにあった古本屋やカレー屋へ現実逃避。


 それで見つけてスープカレーを食べつつ読んだのが、『無人島に生きる十六人』であった。無人島に生きる十六人 (新潮文庫)
 前から気になってた本なんだけど、実物を見るのは初めてだったし、こういう状況で発見するってのも何かの縁だと購入したのだ。これが絵も文章も実に楽しく読みやすい本で、おかげで僕もダメージから立ち直ることができたみたいなもんである。(読んでる間に雨もやんできたしね)
 前輪の故障や家までの十数キロくらい、太平洋での遭難と無人島への漂着に比べたら何ほどのこともない。スペアチューブも携帯ポンプもタイヤレバーもスポークレンチもあるじゃないかと自力で修理、やがて青空も戻ってきて、どーにかこーにか家まで辿り着いた。