黒竹の調理法と黒犬の無作法

文庫版『じーさん武勇伝』のゲラ

 朝の散歩から帰ってきて、ふと庭を見回して驚いた。
 先週であらかた食べ尽くしたかと思っていたタケノコが再びあっちこっちで顔を出してて、勘定してみたら10本近くあったのだ。既に僕自身が20本や30本は食べてる気がするし、ご近所さんにあげたりタケノコ掘りに招いたりしてるってのに、まだ生えてくるとは大した生命力だ。
 基本的に伸ばし放題なので繁殖したのか、それとも今年は特に当たり年なのか。──毎年こんなに収穫できるんなら、売りに出しても儲かるかもしれない。黒竹の茂る家にタケウチとくろべーが暮らすようになったってのも何かの縁だし、作家からタケノコ屋に転職しよーかしら。
 ともあれ、丸焼きで食べるのにもそろそろ飽きてきたので、今朝収穫した4本は醤油漬にすることにした。昨日の昼飯によったラーメン屋でシナチクがわりに姫タケノコの醤油漬ってのがのっててうまかったのである。
 んがしかし、食べただけなので正確な作り方は分からない。生のまま漬けて保存するのと煮込んでから保存するのとどっちがいいいのか迷ったが、まあ火を通すに越したこたあねーだろうとコトコト。
 世の中にはタケノコが大好物で毎日でも食べたいって人もいるんじゃないかと思うけど、そういう人を5月中旬に我が家に招いて心行くまで食べさせてあげたいもんである。なにしろ数が多いし、一般的なタケノコ(モウソウチクマダケ)よりも美味しかったりするので。


 午前に一仕事終えて担当さんにメール送信。昼食には朝に仕込んだ醤油漬を食べてみたら、えらく美味で感動。タケノコの味に飽きかけてた今日この頃だが、これでまた伸びてくるのが楽しみになった。
 午後はゲラチェックでもしようかなと思ったが、外がえらくいい天気なので屋外校正としゃれこむことにした。くろべーに行くぞーと声をかけ、車でいつもの公園へ。
 心地いい風の中、木陰のテーブルベンチでのんびり仕事。こうやって仕事場を選べるのが自由業の利点であるな。
 行儀の悪いくろべーは、何を思ったかテーブルに飛び乗ってきた。公園に浮かれて勢いづいてるのだが、まあ文句言ってくる人もいないような公園だからこのままでいいやと寝そべらせておく。
 はやく散歩しようよと全身でうったえかけてきてるようであったが、もーちっと待ってろとばかりにページをめくる僕であった。