バイキングスとチアスティック

空気の抜けた後で撮影

 なんだか文庫と自転車がらみのことが多かった一日。どこまで本決まりか分からんものものあってどこまで書いていいのか分からんのだけれど、この際ひととおり書き連ねてみよう。
 まずは朝のメールチェックをしたらメディアファクトリーから文庫企画がきてて、去年WEBダヴィンチで発表した『フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン』がアンソロジー本に収録されるそうな。8月後半発売予定だそうである。
 ちなみに僕以外の収録作家は井上荒野さん・佐藤真由美さん・豊島ミホさん・中上紀さん・中島たい子さん・西加奈子さん・華恵さん・三崎亜記さん・光原百合さんだそうである。ずらりと女性作家が並ぶ中、おいらは慣れない女性の一人称で書いたりしてる。まあ内容的には男の子の話なんだけど、本におさまったらどう見えるのかなあ。
 午前の仕事では、これまた8月発売予定の『じーさん武勇伝』のゲラチェック。講談社文庫から出ることになった勢いで短い続編を書き下ろしたのだが、そのゲラが出たのである。考えてみれば第一話の『神楽坂ファミリー』を書いたのは10年近く前なわけで、長いことかかわってるんだなあ。
 著者校正を片付けた後はワープロに向かい、新潮文庫から10月発売予定の『自転車少年記』の執筆。──そう、「執筆」なのである。
 文庫化企画が出た際、なにしろ長い話なので文庫にするには無理があるってことになり、僕の方には「適当な長さに縮めるか今回は見送るか」っていう二者択一の打診がきた。根が天邪鬼な僕は、そう言われると第三の道を目指したくなって「文庫サイズに合わせてあの話を新たに書き下ろす」ってことにしたのである。
 そもそも単行本化に際しても何日も缶詰になってかなり削ったのだ。それをさらに半分以下に縮めようもんならスカスカになっちゃいそうだし、だったら一から枠に合わせた文章で書いてく方がいい。この際だから「ダイジェストであり外伝であり続編でもある」っていうものを書いてやろうと思っている。
 こういう形で出したら賛否あわせてどういうことを言われるかってのも見当がつくけれど、それでもやってみたいと思ったのはある種の知的挑戦だからである。固定カメラで撮った長編映画を手持ちカメラで単発ドラマにするようなもんで、どうやったらいいかなーって考えるだけで想像力がうずうずしてくる。
 これの締めきりもあるので、しばらく翻訳家は休業して小説家に専念しようと思う。休業も何も開店前の準備中じゃねえかって話もあるが、うまい具合に版元の都合で発売日がのびてたもんである。


 てなわけでここ数日は久々に自転車小説を書いてるんだけど、昼頃に第一章が書き上がった。第一章のストーリーだけで単行本の半分くらいまで進んでるってんだから我ながら驚いてしまう。まあこれからも行きつ戻りつしながら進むのだが。
 自転車の話を書いてると自分でも乗りたくなってきて、昼食がてら午後はサイクリング。関東もそろそろ梅雨入りだってえから今のうちにのっとかないといかんのだ。今日は地図を持って行ったことのない街へと走っていく。
 このあたりは幹線道路といってもそこらの農道と見分けがつかなかったりするので何度か道に迷ったが、それでも気持ちよく走って目に付いたカレー屋で遅めの昼食。飯食いながら月刊マガジンを読む。
 『capeta』目当てで読んでたのだが(Fステ編にはどうも入り込めなかったけど次回は盛り上がりそうでうれしい)、ページをめくってたら自転車漫画を発見。『バイキングス』っていうんだけど、これは収穫であった。
 ぱらぱらとめくってて目に付いたのはロード車の絵が見事だったからで、正確性と省略性のバランスが絶妙。これまでいろんな漫画で見てきた自転車の絵の中で一番好感が持てる。さらに出前の岡持ちを持ちつつロードで走ってる絵が目に入り、これが絵になってるというか実に魅力的だったのだ。
 いったいどんなストーリーなのかと興味をそそられて読んでみたら、“才能ある主人公がひょんなことから主題となる競技の魅力に目覚め、個性的な仲間に助けられて……”っていう少年漫画の王道を行く設定であった。やわらかみのある絵も魅力的だし、これは今後も読んでいこう。今回が第3話ってことはコミックスは出てないのだろうが、1話と2話も読みたいなあ。


 その後のサイクリング中、水分補給に寄ったコンビニでゲータレードを購入。ゲータを選んだのは妙なおまけがついてたからで、ワールドカップ応援用のチアスティック2本入りだそうな。
 長っ細いビニール袋に息を吹き込んで棒状にし、2本をぶつけて音を出して応援するってことなので、帰宅して早速ふくらましてみる。──んがしかし、どんな音がするのか確かめることはできなかった。膨らましてる最中にくろべーが興味を持って寄ってきたので、どりゃーとばかりに二刀流で挑みかかったらあっさり返り討ちにあって食い破られてしまったのである。
 サッカーの応援に興味はないが、こういうのも心残りだ。梅雨の晴れ間にサイクリングに出られたら、また補給の時に買って今度こそ試してみようと思う。