給水中のアゲハと脱走中のチャオ

うまいのかい?

 猛暑の中、朝に洗濯を済ませて日中はエアコンのきいた仕事部屋にこもる。
 床をきれいに掃除して、布団もこっちに運び込んでしまった。熱帯夜にエアコンのない寝室はつらいのだ。くろべーも冷房が大好きでいそいそと仕事部屋に入ってくるが、布団には立ち入り禁止を言い聞かせておく。


 仕事や昼寝の合間に一階に下りてくるってのがパターンとなったが、ふとリビングから外を見て、バスタオルにカラスアゲハが止まっているのを発見。
 朝にほしといたくろべー用のタオルだが、長い口を伸ばして花の蜜を吸うようにタオルの水分を吸っている。こう暑いと黒犬も大変だが、黒い蝶も水分補給が大事なのかもな。
 それにしても、このタオルだけ重点的に狙ってるようなのが不思議である。シャンプーの香りにそそられたのか、あるいはくろべーのダシがきいててうまいのか。まあ黒いもん同士だしな。


 夕方も涼しくなるまで仕事してようと思ったが、ふとワープロから顔を上げると西の空が真っ黒。雨雲が広がって雷鳴もゴロゴロいっている。
 こりゃやばいと夕立ちが来る前にくろべー散歩。畑の中の見晴らしのいい道に出たら遠くの稲妻がきれいに見える。まあどうにか雨雲到来前に帰れるかなーと思って歩いていったのだが。
 不意に後ろからどたどたと犬の足音が響いてきた。何だろうと思う間もなく、白黒で眉が茶色のチャオという犬が僕らを追い越して畑の中を突っ走っていく。僕もくろべーもぽかんと見送ったが、どーやら雷にパニックになって脱走したらしい。
 雷で犬が逃げ出して迷子になる、なんて話はよく聞くが、まさに脱走して疾走して失踪しようとしている最中の犬を見たのは初めてであった。
 まあ飼い主の気さくなおじいさん曰く、散歩中に放してやると勝手に帰宅するという犬だから、帰巣本能はしっかりしてるのだろう。雨雲が去ったら無事に帰ってるといいのだが。