作家の励みと読者の幸せ

これが芦原邸のオリーブ

 講演会のために富士市へ。新幹線の車窓から見えた富士山は、雲の中から頭だけ出していた。
 到着後、昼食をとってからポプラビーチの「図書館へ行こう!」の取材をさせていただき、図書館の裏側をあれこれ眺めた後で講演会場へ。立派な設備の整った会場に「講師 竹内真 氏」なんて書いてあるだけで妙に緊張してしまう。
 とはいえ、富士市中央図書館の方々がとても親切だったおかげで講演はやりやすかった。最初こそ何十人もの人を相手に相槌なしに何十分も喋るって感覚が掴みにくかったが、一言一言に頷いてくれたり作者も忘れてるような細かいことを教えてくれた方々のおかげでだんだん楽になっていった。
 参加者の方々に書いてもらった質問カードに答えるコーナーなんかは空気もほぐれて狙って笑いを取れる感覚があった。最後の質問カードにコメントしおえたところできっちり90分を消化して終了。講師に招かれて講演みたいなことをするのはこれで3回目だが、こうやって過不足なく終えられたのは初めてだ。これもスタッフと参加者の方々のおかげなわけで、この場を借りてお礼もうしあげます。
 それにやっぱり、こういう形で熱心な読者の方と触れ合えるのは作家として何よりの励みになる。出版業界の空気を吸ってるとどうしても心がすさんできちゃうけど、自分の書いたことや喋ったことで誰かが喜んでくれるってのは幸せなことだなあとあらためて思う。


 幸せといえば、富士市で講演を終えてから向かった八王子。ここで芦原すなおさんの御宅に泊めていただいたのだ。
 お庭には実際にオリーブの木があり、食卓には芦原先生の手作りのサツマが登場。──『ミミズクとオリーブ』シリーズの読者の方には、そういうことの幸せについてわかっていただけるんじゃなかろうか?ミミズクとオリーブ (創元推理文庫)
 僕もしみじみ読者としての幸せを味わわせていただき、ついでにビールやワイン(そーいやボージョレー解禁だった)や焼酎やウイスキーを味わった。夜の7時頃から飲み始めたはずだが、寝たのは確か夜中の1時過ぎだった気がする。