『チャーリーとの旅』とお祝いの旅

装丁だけじゃなく付録もいい感じ♪

 朝食後、外の道路に停まる車の音、うちの門が開く音にいそいそと立ち上がって三文判を手に取った。
 昨日、担当編集者というか編プロ社長というかから電話があって、僕にとって初の翻訳書となる『チャーリーとの旅』を発送したと聞かされてたのだ。自分で読みたいから訳者に名乗り出た本だけに、いそいそと出迎えるほど楽しみだったのである。
 そんだけの期待を裏切らず、これが想像してたよりずっと立派な本だった。イラストやデザインなど本の隅々まで素敵な仕上がりになってるし、読書中の栞や地図としても使える付録も実に立派な出来。見返しの「旅立つのに、遅すぎることはない」とか付録の「チャーリー、今夜はここに泊まらないか?」とか、いいフレーズがいいところに配置してあるのも嬉しい限り。こういうところにセンスのいい人達と組んで仕事ができたってのはしみじみ幸せなことだと思う。
 嬉しくて、にこにこしながらページをめくる。次々と名シーンが飛び出す……ってのは自画自賛じゃないよな。作者スタインベックが偉いのである。訳者としては、意外にこのシーンの文章ってあっさりしてるなって印象が強いのが面白かった。翻訳しながら頭の中でイメージが広がってたせいもあるだろうし、そうやって読者をインスパイアしてくれるのがスタインベックの文豪たる所以なんじゃなかろうか。


 旅の本が届いた記念ってことで、僕も浮かれ気分で旅に出た。駅で青春18きっぷを買って下りの各駅停車に乗り込み、海辺の駅で降りて裸足で砂浜を散策。お昼は飲み屋の定食と寿司屋のランチをハシゴして、腹いっぱいの昼食をとる。
 寿司屋は何年か前にふらりと立ち寄った店で、そのときと同じ地魚のセットを注文。ずらりと並んだネタの半分以上が白身魚でそれぞれ違った旨みを味わえるので、白身好きの僕には最高なのだ。活きのいい白身ばかりを次々と食べてるってえと赤身や貝類の寿司が品がないような気さえしてくる。まあそんなこと言いつつも、カジキやらサザエやらアワビやらエビやらイカやら塩辛やらも食べまくってたんだけどね。
 お祝いっつうことで、当然どっちの店でもジョッキの生ビールを注文し、昼間から酔っ払う。苦労して仕上げた本が、こうして形になるのはいいものだ。
 もともと文庫本でこの作品を読みたいなーってところから始まったこの企画だけど、こうして立派なハードカバーになると感慨もひとしお。あとはこれがどーんと売れて立派な文庫本になってくれることを祈るばかりである。[rakuten:book:12005165:image]