観劇と感想

内容と関係ないけど、おいらの木彫新作

 夕方から外出。電車に乗って久々の渋谷。
 パルコ劇場で『コンフィダント・絆(きずな)』っていうお芝居を観るのである。去年から楽しみにしてた舞台がようやく初日を迎えたのだ。
 作・演出が三谷幸喜ってだけでも魅力なこの舞台、1888年のパリを舞台にゴッホゴーギャン・シェフネッケル・スーラが登場するとあって、是非とも見たいと思っていた。単純にどう料理するかって興味もあったし、僕もいつかシニャックや新印象派について何か書きたいと思っているので勉強したいって意味もあった。どーにかチケット入手したいなーと思ってたら親切なマイミクさんが手配してくれたのである。
 久々の渋谷は迷子になりそーだなと思いつつ、どーにか無事にパルコに辿り着いた。開場時間のパルコ劇場に入ってみると、ロビーは芸能界関係者から贈られた花でいっぱい。生花の香りが充満する中でひょいと見ると、壁にスーラの複製画が飾ってあるのを発見。見回せばゴッホゴーギャンもあったし、シェフネッケルの作品を大きなサイズで見るのはこれが初めてのよーな気がする。
 初日のせいかお客の顔ぶれも豪華で、俳優さんや放送作家さんをちらほら見かけた。花の多さも業界人の多さも、三谷演劇の新作の注目度を物語ってるのかもしれない。


 上演が始まると、客席は序盤から笑いがわきまくり。後ろの方の席だとときおり笑い声で台詞が聞こえないほどだったが、これも生の醍醐味ってもんだろうか。
 台詞の端々に19世紀の絵画がらみのネタが挟まり、そのあたりの背景を知ってると笑える台詞もあったりする。僕には面白いとこでも客席全体のリアクションが少なめだと、ちょっと残念なよーな逆に優越感を感じるような。
 優越感といえば、意外だったのは優越感や劣等感といったマイナスの感情がかなり丹念に描かれてたこと。もちろんコメディーとしてのツボは押さえているけれど、この作品を三谷喜劇ではなく三谷悲劇と捉えることも可能だと思う。実際、後半になると客席のあちこちからすすり泣きの声が上がっていたし。
 もう一つ意外だったのは、結構な頻度で暗転が入ったこと。三谷作品ってえと一幕物で暗転なしのイメージが強かったけど、今回は意図的にいっぱい入れてあるのだ。自らの固定イメージを打破しようって試みなのかもしれないけれど、この暗転がとても魅力的に仕上がっていて、洒脱なミュージカル風の構成をカンジさせてくれた。
 明かりが搾られるってえと堀内敬子さんがナレーションや歌で芝居を引き継ぎ、荻野清子さんのピアノの生演奏が高まるって趣向なのだ。荻野清子さんのピアノってこれまで意識してなかったけど、とても繊細に役者たちの感情に寄り添っていて素晴らしかった。役者とアドリブで絡んでるようなところもあって、とても芸達者なピアニストだなーと思う。こんど彼女のCDとかを聞いてみようかなっと。
 そうやっていろいろ楽しみながら、後半は4人の男たちが体現する芸術家の業みたいなものが前面に出てきて、見終わった後でいろいろ考えさせられることが作品だった。以前のパルコ公演では「すかっと笑えて何も残らないコメディー」みたいなコンセプトがあったと思うけど、今回はその反対でいろんなものが残る作品だったように思う。


 てなわけで、チケットを手配してもらえたことに感謝しつつ、これから見に行く機会がある方には是非おすすめしたい舞台であります。