編集者持参の校正原稿と着払腕時計の相対高度

吹雪に埋もれるラスカルはしご

 昨日の午後から雪になり、夜の間も降ってると思ったら今朝にはすっかり積もってて、日中もずーっと降り続く。風が強まるとすっかり吹雪状態で、ひどいときは煙突から強風が入って燃えてる最中の暖炉の灰を巻き上げている。
 ここで初めて冬を過ごす僕にはそれだけでもすごいのだが、もっとすごいのはそんな吹雪と積雪の中を我が家までやってくる編集者がいるってことである。子供の頃読んだ『船乗りクプクプの冒険』って小説に、地の果てどころか現実を越えたところまでも作家を追いかける編集者ってのが出てきたが、こーゆーことなのかもしれないとふと思う。
 ほんとに来れるんかいなと思いつつメールで道順を教えたのだが、ほんとに来たんだから驚いた。雪道をものともしないタクシーを下車した後は徒歩で雪道をかき分けてきたそーで、ブーツファッションだったことが我が家に来る際には役にたったわけである。東京は快晴だったそーだが、我が家のあたりでは地元民も驚くくらいのドカ雪なんだそーな。
 なにしろ、僕が教えた「タクシー降りたら石段を下りて」っていう道順通りに進もうとしても石段なんかどこにもなかったそうだ。……積雪のため、数段ある石段もすっかり雪に埋もれてたのである。そもそもどこまでが道でどこまでが藪なのかも分からなかったそうで、下手すりゃ遭難してたかもしれないわけだ。
 ちなみに雪には慣れてるはずの某宅配業者の地元ドライバーは、我が家まで辿り着けずにトラックごと雪の中でスタックしちまったらしい。この別荘地の管理事務所にある除雪車で救出されて事なきを得たらしいが、僕が楽天で注文した荷物は結局うちまで届かなかったんだからすごい。──つうか、楽天の着払いの荷物は届かないってのにどーして新潮社の校正原稿は届くのだ?
 その荷物は事務所であずかってくれたそーなので、くろべーの散歩がてら取りにいった。くろべーは浮かれて駆け回ってるが、僕はニット帽の上からダッフルコートのフードをかぶって下向いて歩く雪中行軍。厚手の生地のおかげであったかいが、足元からしんしんと冷えてくる。
 そうして受け取った荷物ってのは高度計つき腕時計で、それによると我が家の標高は約985メートルってことになるらしい。たしか管理事務所のとこにあった標識の表示は890メートルくらいだったから、実に百メートルもの高低差があるってことだろうか。積もってる雪もさらさらしたパウダースノーだし、スキーがあればいい感じのゲレンデだよなあ。
 まあ気圧を元に計測する相対高度計だそうだから、これからマニュアル読んだり計測条件を変えたりして正確な高度を算出してみようと思う。