ワンダー・ドッグとクライミング・ウォール

某商業施設の中にあります

 下山して一週間。なんだかんだとありつつも、郊外都市のそのまた郊外での生活にもすっかり馴染んできている今日この頃。
 『珊瑚朗先生無頼控』の最終話(つうか今回の連載のラスト作品)の載った『ミステリーズ!ミステリーズ! vol.26も昨日とどいたし、すったもんだのあった『ワンダー・ドッグ』も無事に新潮社の方で入稿された模様。下山した途端にエッセイの依頼が入ったり模したけれど[ありがたいことでございます)、とりあえずほんとに仕事おさめでありますな。
 新作長編『ワンダー・ドッグ』は1月22日発売予定。あれこれ手直ししたので前の版元でくだらない口出しをされてたときよりさらにいい作品になってるし、既に関係者の間ではいろんな方に面白がっていただいてるようなので今後が楽しみ。──ちなみに、僕自身おもしろかったこととしては、越冬のために移住してみたらすぐ近所でクライミングウォールを発見してしまった。
 『ワンダー・ドッグ』はある高校のワンダーフォーゲル部とそこの部員犬との物語なんだけど、作中でこのクライミングウォールが出てくるのである。ロッククライミングとかボルダリングとか言われる競技のための施設で、見た目はどこの前衛オブジェだって感じでなかなか楽しい代物である。一見するかぎりは単なる派手な壁なんだけど、思わずデジカメで撮影しちゃったりなんかして。
 小説の執筆時、僕は映像資料ばかりでほとんど実物には触れなかった。まあ庭のウリハダカエデの木に手がかり足がかりを設置して10メートルくらいの高さに登れるようになってるってのも一種のクライミングボードだけれど、ちゃんと競技用に作られたものにはあまり縁が無かったのである。それが刊行が本決まりになった頃になって近所で発見することになるとは。
 いやそもそも、登山の話を書いてる時点では山に縁がなかったのに、書き終わった後になって僕は標高1000メートル近い山の中に移住した。『自転車少年記』のときも少年時代のエピソードを書き終わった後になって風ケ丘団地のようなところに引っ越したし、どうも作品を書いた後でそれっぽいところに移住するのがパターンになってるような気がするなあ。
 それに一体どんな意味があるんだってのはよくわかんないけれど、ちょっと買い物したり飯食ったりした後にクライミングボードを見るってえと、ふつふつと登りたくなってくるね。いや設置されてるとはいえ勝手に登ったら叱られそうなんだけどさ。