世界の将棋大会と連敗の続編取材

字面だけでも楽しい「中将棋」

 久方ぶりに千駄ヶ谷に行った。……ピーターキャットがないのはともかく、ホープ軒までなくなってるのが時の流れってやつですなあ。
 雨の中を出てきたのは世界の将棋大会というイベントに参加するためで、生まれて初めて将棋会館ってところに足を踏み入れた。前に読んだ『聖の青春』でプロ棋士たちの戦いが繰り広げられてた場所だが、一階二階は一般人も入っていいんだそうな。
 一階には一般客用の売店があり、二階には将棋道場と研修室がある。売店は休業中だったけど、様々な将棋グッズの並んだショーケースを見てるだけでも楽しい。古今東西の有名棋士の書が入った扇子なんかは、誰がどんな言葉を選んでるのか一つ一つ眺めてしまった。──大抵の人は四文字熟語だったけど、某永世名人については「突撃」って書いてほしいなーって冗談をふと思いつく。まあこういう場所で口にすると怒られるんじゃないかと思って黙っておいたけど。
 僕が目指したのは研修室だが、道場は冬休みのためか土曜日のためか子供の姿が目立った。みんな賢そーに見えるのは僕が将棋はてんで弱いからだろーか。しかし子供の付き添いできてるお母さんたちは美人が多い気がするのは何故だろう?
 世界の将棋大会の方は、mixiで知り合ったプロ棋士にしてシャンチーの非中国人世界チャンピオンたる所司和晴七段の主宰で、和気藹々と世界中の将棋を楽しむというイベントだった。様々な将棋盤やチェスセットの展示もあって、素人チェス駒師の僕としてはそういうのを見てるだけでも楽しい。のっけからデジカメを出して写真をとりまくったが、後でふと気づくいたら駒の写真ばかりで人間の写真は一枚もなかった。
 好きな種目を選んで他の参加者との試合も組んでもらえるので、僕はチェスを洗濯。しかし最初に上品な御婦人に一勝しただけで後の試合は全て負けた。もともと駒作りがすきなだけで腕前はヘボもいいとこなんだが(なにしろキャスリングの際に片手で駒を動かす順番なんかも初めて知った)、今日は序盤から戸惑い中盤までにミスして終盤は取り返しがつかないっていうドツボ状態。なんかもう、かつては将棋部だったんじゃなかろうかっていう雰囲気の人と向かい合っただけで勝てる気が全くしなっていた。
 記録に残した試合だけでも4連敗か5連敗したはずだし、詳しい人にいろいろ教えてもらったのも勘定すれば(中国将棋のシャンチーやタイ将棋のマックルックなどを教わった)10連敗くらいはしたんじゃないかなあ。小学生の頃に将棋クラブでほぼ全敗したことをふと思い出した。
 とはいえ、こういう雰囲気の場所だと負けて悔しいとかは全くないのが素晴らしい。対戦相手からいろいろ教えてもらえるのがありがたかったし、次々に負け続けても参加賞としてシャンチーの携帯セットをいただけたし。『三つのかけらの物語』の続編を構想する上でいろいろ参考になって、実に有意義な土曜日だった。──つうか俺、『三つのかけらの物語』でシャンチーを話題にしていながら実際に駒を持って対戦したのって今回が初めてだったんだよなあ。
 そんなわけで、いただいたシャンチー駒を使ってみたい今日この頃。年末年始にお暇な友人知己の皆さん、いっちょおいらと対戦してください。「ルールを知らない」って言われそうだけど、それはおいらも一緒であります。