100冊のサイン本と2箱のクロネコ便

くろべーも少しモデルになってる本です

 久々にカレーを作って昼飯に食ってたら、本が100冊届いた。
 先日発売された『ワンダー・ドッグ』である。つっても、著者自ら100冊購入して売り上げを支えようってわけではな。世の中そうやって自らベストセラーを作る人もいるらしいが、僕にゃあそんな経済力も根性もないのだ。この100冊は著者サイン本として新潮社営業部が熱心な書店さんに納入するためのものである。
 気楽な気持ちで「なんぼでも書きますよー」などと請け負ったのだが、実際に100冊届いてみると結構な迫力である。なにしろ宅配便用大型段ボールに入りきらずに2箱になってたし、その一箱でさえ抱え上げるのに苦労するほどなのだ。こういうのを毎日扱ってるんだから、書籍流通にまつわる人たちって重労働だよなあ。
 そして軽労働の小説家たる僕はというと、これ全部にサインを入れるなんてどのくらいかかるんだろーと怯えつつ、とりあえずカレーライスをおかわりしてたのでした。


 食後に意を決してナイフを取り出し、箱の梱包を開く。10冊ごとにビニール帯に包まれてるのかーなどと、ちょっと新鮮な気分で本の山と向かい合った。
 くろべーが段ボールとビニール音という組み合わせから食い物かと期待して見に来たが、中身が本だと分かると明らかにがっかりしていた。……とはいえ、最初のうちは覗き込んだりビニールを舐めたりしてたので、もしかすっとサイン本の中に黒犬の毛が紛れ込んでるかもしれませんが、どうか御容赦ください。
 著者サインっつっても悪筆の僕のサインは全くありがたみがないのだが、3文字の漢字を徹底的に簡略化してあるので書くのに時間はかからない。やり始めてみると案外さくっと書きあがり、むしろもう一度ビニール帯に包む方が大変なくらいだった。10冊重ねてぴったり閉じられてるので、そこにきっちり戻すのが結構大変なんだよね。
 輸送途中で破れてたビニール帯もあったので、その分は仕事机の脇の棚にあったビニール袋で包むことにした。──でも考えてみると、このビニールってゲラが入って届いたものかもしれない。その原稿が『ワンダー・ドッグ』のものだったら、この袋は材料と製品をおさめたことになるんだなあ。
 なんてなことを思いつつ、ネット経由でクロネコ便の集荷依頼ってのをしてみる。今日の夕方5時から7時の間っていう時間指定ができたので頼んだところ、5時5分前にはドライバーがやってきてくれた。ちょうど5時に間に合うようにくろべー散歩に行ってたとこだったんで、散歩帰りの黒犬くろべーの目の前で100冊のサイン本が黒猫マークのトラックに載せられていきましたとさ。