春の香気と巷の名店

イリコにデビラにジャコ天に……

 昼飯ついでに買い物に行ったら、今年はじめてジンチョウゲが咲いてるのを発見。大通りに面した歩道の生垣だったが、顔を近づけて大好きな香りを吸いこんだ。僕に春の訪れを告げてくれるのはこの香りなのだ。
 ……なーんて書いててふと気づいたが、もう2月も末なんだねえ。ブログをつけるのをちょっとサボると今日が何月何日だったかをころっと忘れてしまう越冬バカンス生活である。
 まあさぼってるだけで、日々ブログに書きたいなーってネタは結構あったりする。今日の日記とはずれるけど、ここ数日に行った飲食店についてちょいと書きとめといてみよう。


八王子・みんみんラーメン
 八王子駅よりは西八王子駅の方が近いのかな。ネギのかわりにタマネギがのってる八王寺ラーメンの名店。バラチャーシューメンが絶品だという芦原すなおさんの言葉につられていってみたところ、やわらかに甘い風味がほんとに絶品であった。
 それと店の鄙びた外観が何ともいい感じで、午後3時すぎに行ったせいもあって一見しただけでは営業中に見えなかった。それでも中に入ると畳敷きのテーブル席は家族連れで賑わってるんだから、いかにも地元で愛されてる感じでよかったなあ。


チェーン店・無尽蔵
 ラーメンつながりでこの店。元は新潟の店らしいが今は全国展開のチェーン店のようである。ここは特別ラーメンがうまいとかの評判を聞いたわけではないけれど、僕はどーしても行ってみたい店であった。理由は麺の成分で、ここは製麺の段階で柿渋を麺に練りこんでるらしいのだ。
 やたらと臭いことで有名な塗料の、あの柿渋である。ポリフェノールたっぷりらしいが、実際に塗料として使ってその臭気や扱いずらさを実感してみた身としては、いったいどういうことになるんだろうと怖いもの見たさの好奇心がわいてきたのだ。
 で、実際食べてみた感想としては……スープはわりとオーソドックスながら、店員に「替え玉ないの?」と尋ねてみたってことから御推察いただきたい。塗料とちがって熟成や濃縮はしてないのがいいみたいですな。


新橋・宇和島
 こちらは芦原すなおさんつながり。名作『ミミズクとオリーブ』シリーズに出てくる料理の数々が食べられる店だと知って食べに行ってみた。讃岐料理ではなくその名の通りに愛媛県宇和島料理の店なんだけど、距離が近いだけあって観音寺の料理と守備範囲が似てるのだ。
 サツマとかデビラとかイリコとかジャコテンとか、芦原作品を読んでて本に出てくる料理が食べたくなったことがある人って結構いると思う。讃岐うどんはすっかりメジャーになったけど、魚料理については食べられる店って少ないのでありがたい。日本料理の板前さんが丁寧に作ってくれた料理はどれも美味しいし、宇和島の地酒も美味しいし。
 ただし、愛媛県だけあってサツマ(この店では「佐妻汁」という料理)にミカンの皮が入ってるのは賛否両論あると思う。ゆずを使う時みたいにおろして薬味にしてるんだけど、シンプルにネギやシソだけの方がいい気もする。まあ
僕の場合は芦原邸で御馳走してもらったときの味が原体験になってるせいもあるのだろうけども。


ラ・カシェエット
 これは神楽坂の地ビールダイニングバーで、『ビールボーイズ』のサイン本を作りに東京創元社に行ったと後で寄った。
 日本各地の地ビールや世界じゅうのクラフトビールが飲めるのが嬉しいのはもちろんだけど、ビールのツマミ系が充実してるのが嬉しかった。アンチョビポテトは自分でも真似して作るようになったし、枝豆とかオニオンリングとかビール党の好む料理がしっかり美味いんだよね。
 最初に信州産とアメリカ産のアンバーエールで飲み比べ、食事中はアンカースチームを飲んで終盤はシメイブルーを味わい、デザートがわりに独歩のピーチビールで締めるっていうのはなかなか贅沢なビールの飲み方であった。他にも飲んだような気がするけど思い出せないのは酔っ払ってたせいだろうな、やっぱり。