チェス取材とコマ依頼

対局時計も初めて使いました

 東急池上駅のそばにあるチェスセンターに行ってきた。
 昨年は日本将棋連盟の総本山たる将棋会館に行ったけど、こちらは日本チェス協会のお膝元たるチェスクラブ&ショップである。去年は『三つのかけらの物語』ってのを書いたけど、そのうちチェスや将棋を絡めた小説を一冊書きたいなーと思ってるので、その取材と娯楽を兼ねてやってきたのだ。
 池上駅から徒歩数分、ごく普通のマンションの一階の一室の扉に「CHESS CENTER」という看板が出ていた。「OPEN」と書かれた札には「ノック不要/お気軽にお入りください/土足OKです」なんて書いてあった。前に本やネットで知ったときには、マンションの一室にあると聞いて本格的&お堅いとこだと僕みたいな素人は場違いかなーと思ってたのだが、実際に来てみると結構気楽な場所みたいである。もともとチェス友達の一人からそう聞いて連れてきてもらったのだが、やっぱり文字での知識と口コミや実際に足を運んでの印象とは違うもんだね。
 入ってみたら子供がわいわい遊んでて、ちらほらいる大人もみんな好きなように過ごしてるような空間であった。日曜日は子供向けの教室が開かれるんだそうで、やがて上品なご婦人が壁掛けの大型チェス盤(なんていうのかな)を使って小学生くらいの子供たちにあれこれ指導していた。優しげな口調に僕も一緒に教わりたくなったが、おいらの方が子供たちより弱いんじゃなかろーかって気もするし、大人同士の対戦で遊ばせてもらった。戦果は……今日は勝率5割くらい行ったのかなあ。おいらでも結構勝てると知ってちょっと嬉しかったが、リアルチェスの対戦ってやけに手に汗かくもんだねー。
 ここはチェス用品やチェス書籍を扱うショップでもあって、実際に様々なチェスセットを手に取ることもできた。チェス駒作りが趣味なおいらにはそれだけでも嬉しかったし、スタッフの方と話してるうちにセンター内で使われてるチェスセットの欠損駒を彫ってくれないかと依頼されてしまった。いってみりゃあチェス駒師として初めての依頼をもらったわけだし、僕の作った駒がここで使われるのかと思うと光栄である。
 まあしかし、「お幾らで作ってもらえますか?」と聞かれて「いえいえお金を貰うのは心苦しいので何かこちらの商品と現物交換で……」などと答えてしまうあたりが我ながら小心者なおいらであった。


 そうそう、ちょうど友人と遊ぶために自分で作ったチェスセットも持参してたので、スタッフの方に「これならいくらで売れるでしょう?」と尋ねてみたところ、「オリジナルってことも考えて上限1万円」とのことであった。駒の大きさ(僕のは公式のより一回り小さい)と駒の価格相場(けっこう高い)とを考慮するとなかなか光栄な見積もりであったが、制作期間を考えると採算はとれないよな。残念ながら作家から駒師に転職するのは難しそうだ。
 日頃からブログやmixiに画像をのっけてるってと、僕みたいな素人の木彫りでも「お金払ってもいいから作ってほしい」なんて方が現れたりする。それはそれで光栄でありがたいことなんだけど、手間と出来を考えるとまだまだ貨幣換算には無理がある気がします。──今後は名匠・左甚五郎にならい、冬場に僕とくろべーを滞在させてくれる方がいらしたらお礼がわりに滞在中に制作した物を置いていくってことではどーでしょう?