屋根の補修と屏風の展示

床の間の幅までびったり!

 感動的にいい天気。「こんな日に仕事なんかしてたまるか日和」である。冬ごもりを前にいろいろやることはあるが、今日は一切執筆しないと心に決めた。
 なにしろ朝の散歩から澄んだ青空、あたたかな日差しと爽やかな冷気を満喫できたし、くっきり見える稜線がひたすら美しいのだ。朝の光が西の山々に当たると陰影がくっきりして鮮やかなんだよね。
 午前中からラジオを庭に出し、ニッポン放送を聞きながら屋根に登る。補修用のカ変成シリコンを仕込んだカートリッジガンってのをリュックに入れて背負い、はしごで屋根に上がってくのはスナイパー気分であった。
 ガンのトリガーを引くとシリコンがにょろにょろっと撃ち出されるので、それで屋根と煙突の継ぎ目にできた隙間を埋めていく。ハケできれいに伸ばしてひとまず作業完了、木曜ビバリーを聞きながら30度くらいに傾斜した大屋根に寝転び、雲ひとつない青空を見上げるのは実に実に気持ちいい。
 屋根から下りた後も、そのままラジオ聞きつつ昼過ぎまでチェーンソーでの薪作りに励み、午後は昼飯と買い出しのために外出。向かった先は最近おきにいりのギャラリーカフェで、カートリッジガンでの屋根補修もここで知り合った常連さん(照明作家や古美術商)に教わったのだ。今日は額装美術の展示をやってるというから昼飯ついでに鑑賞しよう……と思ったら、ギャラリーに一歩入るなり「奥の和室の床の間を見てみて!」と声をかけられた。
 何かと思って行ってみると、こないだ僕が持参した屏風が展示されていた。──我が家の納戸から出てきた、大正時代の謎の書屏風なんだけど、このギャラリーカフェで紹介してもらった古美術商の方に見てもらったのだ。持ち返るのも面倒だったのであずけておいたところ、立派な和室の床の間に見事な照明作品でライトアップされて飾られてたのである。
 ちなみに鑑定結果はというと、「明治大正期に活動したプロの書家が、青年期から壮年期の体力の充実した時期の作品で、おそらく知人が家なり別荘なりを新築した際に贈ったものであろう」とのこと。現在は落款と署名をもとにどういう書家だったのかを調べてもらってるとこなんだけど、センスのいいギャラリーに預けておくとこうも見事に展示されるのかと驚くやら感動するやら。
 なにしろ、僕の仕事部屋に広げたときには、いったい誰が何の目的で書いたどういう意味の書なんだってことばかり気になったし、「でかくて邪魔だなー」とか「古くてぼろいなー」とか「くろべー嗅ぐのはいいけど舐めるなよ」とか、ろくなことは思ってなかったのだ。それがここでは立派な芸術作品に見えるし、実際に書が好きな人が鑑賞して楽しんだり癒されたりしていってるそうな。猫に小判とか適材適所とかいう言葉が頭に浮かぶねえ。
 そういう感慨を抱いた後だけに、額装作品の展示もとても楽しめた。絵や写真を見るときってのはついついその作品ばかり気にしてしまうけれど、その作品をどういう形で展示するかっていう工夫の技術とセンスを鑑賞するっていう視点はとても面白いのだ。作家の方にいろいろ説明してもらえるってのも贅沢な話で、こういう文化を楽しめるお店ってのは素晴らしいよね。
 買い出しして帰宅して温泉に入ってビール飲んで、自然環境と文化環境の双方を堪能できた一日だったなーとしみじみ。こういう日に飲まずしていつ飲むのだと、一本だけ残しといたエビスの「至福の贅沢」も飲んでおります。