リゾートホテルとフクロウトラップ

今月下旬に新刊発売予定!

 珍しく夜から出かける。──東京に住んでる頃から夜遊びってあまりしない生活パターンなんだけど(理由:眠いから)、田舎暮らしや犬との暮らしに深入りしてからはほんと〜に夜には出かけないパターンなので、夜8時に家を出るってだけでもなんだかドキドキしてしまう。
 まあ家から車までのアプローチだけでも足元もおぼつかない真っ暗さ加減なので、コケやしないかとドキドキするってのはあるんだけどね。ハンドライトで足元を照らしてるってえと、俺んちの周りはオペラハウスかって気がするほどだ。いや歌声が響く都会のオペラハウスとフクロウの声が響く田舎の山道じゃあまるで別世界だけどさ。
 で、夜のお出かけで向かった先は近所の某リゾートホテル。普段の生活じゃあまず寄らないとこなのでついきょろきょろして施設各所をじっくり観察してしまう。ここで開かれる某イベントのために来たのだが、ちょいと早く着いたのでウエイティングバーでジントニックなんぞを注文、ちびちびすすりながらイベントルームのインテリアを見て回る。
 なぜか壁の四隅に据付の本棚があったので、どんな本が並べてあるのか気になったのだ。美術書が多くて文芸は古典がメイン、ちらほら学術書もあるって中になぜか函入り『AKIRA』全巻セットなどが置いてある。こういうラインナップってのは誰がどういう基準で選ぶのかなあ。
 結局、僕が手に取ったのはイギリスの鳥類学者が書いたフクロウの本。立派な椅子に座り、真っ白なテーブルクロスの上で本を開いたんだけど……100人やそこらの人々が集まってるってのに、僕みたいに壁の本棚を気にしたりそこの本を読んだりって人は誰一人いないのが気になった。ホテル文化にゃ詳しくないが、こういう行動って何かしらマナーに外れてるのだろーか?
 まあ不躾だろうが非常識だろうが、本ってのは読むためのもんであって壁の飾りではない。安酒つかってるくせに妙に高いジントニック飲んでんだから文句を言われる筋合いはないと開き直り、イベント開始までの時間はフクロウの巣作りと巣箱設置についての文章を熟読。
 それで分かったんだけど、読めば読むほど我が家の煙突はフクロウが好む巣箱の条件に一致する。こういう入り口とこういう高さにすればいいってのがぴったりな上、朽木のにおいがするといいなんて言われると笑うしかない。
 だから去年は2羽も飛び込んできてくれたのかと納得したが、問題なのは「フクロウが好む巣箱の高さ」と一致するのは「屋根の上に突き出た煙突の高さ」だってことである。実際にその煙突に飛び込むってえと、屋根の下にも1階の暖炉までさらに数メートルの深さがあるわけで、これはフクロウにとったら落とし穴つきの罠にはまるようなもんだったのかもしれない。どうやらこのオンボロ山荘は大仕掛けなフクロウの捕獲罠だったんだな。
 なーんて思ったところでイベント開始。はい、そっちもそっちで楽しかったであります。