小さなネツケと大きなクジラ

展示というかアートとしても楽しいね

 土日で取材旅行。東京で根付のことをあれこれお勉強。
 新幹線で上京、まず向かったのは四谷三丁目。大学4年の時だったか、イメージフォーラム映像学校というえーかげんな学校に1年間通った際に使ってた駅だけど、そこから御苑方向にちょっと歩くと根付コレクターの間で世界的に有名なスポットがある。瀟洒なマンションのオートロックをくぐり、品のいい一室に通された時点でわくわくしてしまった。こういう感覚って久しぶりだ。
 ここは提物屋というディーラーさんなんだけど、「小説推理」の担当さんが新連載にあたってこの提物屋さんの協力をとりつけてくれたことから久々の上京と相成った。やはり取材の基本は「たとえ遠くても直接出向いてみたい」と思わせる何かがあるってことだよなー。それがなかったらアゴアシ付きでも面倒だけど、それだけの魅力があったら自腹切ってでも行く。いやもちろん、今回は地元にくろべーをあずかってくださるご家族がいたって要因が大きいのだけれど。
 提物屋さんでは貴重な古根付の数々を直接触らせてもらえてとても楽しかったし、専門家の方からあれこれ教えていただいた上に僕の構想や設定の間違いも指摘していただけた。こういう取材を参考にしながら作品の枝葉を膨らましていけるのはありがたいかぎり。


 日曜は上野の国立博物館を訪れて郷コレクションの根付を閲覧。ここでは根付そのものはもちろん、展示の様子やそれを見ている人々の様子を見るのが楽しかった。
 日本人はもちろん、外国人観光客が身を乗り出してのぞきこみ、英語やフランス語やその他の言語(聞き分けられん!)で語り合ってる中で「ネツケ」っていう日本語を発してるのだ。ネツケは国際語だってことは聞いてたものの、やはり直にそういう状況に身を置くと感慨深い。作中でこの感覚を描くにはどうすりゃいいかなーと考えるようになるってのも、取材の効果かもしれないね。
 そうそう、久々に国立科学館の前を横切って、巨大なクジラのオブジェを発見して見とれてしまった。──これ、昔からあったっけ? 中学の頃にここに来た時にはなかったと思うのだけど、いつの間にか上野公園を横切るときは噴水前を通るってのが習慣になってたのでいつからできた展示なのかまるで分からない。
 小さな根付を見に来た旅行で巨大なクジラに気づくってのも不思議なもんだなと思いつつ、記念にそいつの勇姿を撮影。ふっと振り向くと、僕のすぐ後ろで外国人観光客も同じクジラを撮影していた。


 なんてな感じで勉強に励みつつ、間にあれこれ会食を挟んで楽しく過ごすことも忘れず、なかなか充実した一泊二日となった。お世話になった皆様、いろいろありがとうございました。
 しかし好事魔多し。インフルエンザ流行中ってことで山暮らしの田舎者としては都会の人込みではごついマスクを装着して注意してたのだが、帰宅すると結構な疲労感で、翌日の月曜日はどかーんと発熱。数値の高くなりがちな耳温計とはいえ、最大39度を記録した体温に自分でびびってひたすら寝てすごした。
 今はどーにか回復したけど、ちょっと仕事が遅れちゃったねえ。明日から頑張らねば。