方法論と後頭部
最近、『映画に学ぶ魅せるマンガの作り方』という本を読んでいる。曽田正人さんのブログで著者の堀江一郎さんが『め組の大吾』を一緒に作った戦友だと紹介されてるのを見かけて読みたくなったのだ。
- 作者: 堀江一郎
- 出版社/メーカー: グラフィック社
- 発売日: 2010/01
- メディア: 大型本
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なにしろ初歩から丁寧に書かれてるので、俺は漫画家になるぜーってトンガって自意識が膨らんでる若者が読むと「へへん、この程度のことわかってらあ」とかバカにしそうな気がする。なにしろ僕がその年ごろというか、その立場ならそう言うと思うし、本格的にシナリオ理論を学んでる人から見るとちょっと大雑把すぎるって要素もあるし。
だけど、そういう基礎を積み重ねていくことで大事なことに迫ってく形は結構いろんな人に参考になるんじゃないかと思う。――ちなみに、文芸編集の職についてる人でも、こういう技術論からのアプローチできちんと作品を語れる人って結構少ないので、是非読んでほしいと思わずはいられない。(学歴とプライドの高い人は多いので「余計なお世話だ」とか言われそうだけど)
でも、僕の担当者のバカの例をひとつあげると、基本的に「これは私の思っていたことと違うからダメ」「私がそう思うからきっと読者もそう思う」「私の思いついたようにすればいい」ってことしか言わなかったりするんだよね。こっちが映画用語やシナリオ用語で説明しようとすると「私はそういうのは知らない」などと言い返してきて、勉強したって罰は当たらないだろうと言ったらむくれるか無視するかって対応しかできなかったりなんかして。
あるいは、上記の文章の「私」の部分を「上司」に変えただけのことしかいわないヘタレサラリーマンとかね(「一人でもそういう意見がある以上、多くの読者を獲得するには上司のいうようにするべきではないでしょうか?」)。そういう人って結構うようよしてて、戦友どころか障害、それどころか「戦場で一番注意すべきは後頭部に被弾しないことだ」っていうジョークの種でしかなかったりする。
そういう、職能が低いくせに向上する気はなく、文芸編集の仕事をする上で目指す方向がただ「私or上司の思うようにする」ってことでしかない人にかかわっちゃうといい迷惑なので、せめて同じ言葉と方法論で語ることができたらって願ってる僕なんだけど、そういう場合のテキストとしてもこの本って使えるんじゃないかと思うのだ。――つうわけで、どーか集英社や新潮社や幻冬舎の社員教育にお役立てください。
- 作者: 光永康則
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/01/23
- メディア: コミック
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で、マンガ業界って感覚的なメディアなわりに論理的な方法論アプローチってきちんとあると思うんだけど、同じような感覚を小説業界で味わうことって少ない気がする。それはお前のアンテナが狭いからだとか、お前のような駆け出しはそういうレベルに達してないからだとか言われりゃそれまでなんだけども……
ともあれ、1月末の締め切りを切り抜けて次回分の構想をまとめる時期なんで、この本を読んだ勢いで登場人物の一人を漫画家志望者にしちゃおーかなーなどと思ってる僕だったりします。ほんとにするかどーかはまだ五分五分だけど、さてどーすっかなあと考えながら木彫りに励む今日この頃。