地吹雪と名提案

左側は湯気じゃなく地吹雪

 機能は一日雪が降り積もってたけど、今日は一日風が吹き荒れている。積もった粉雪が地吹雪になってさあ大変。
 寒いなーと朝の散歩をさぼって家に引きこもっていると、宅配便の来訪。ドアを開けると地吹雪は玄関にも吹き込んでくるし、何より配達のおっちゃんの寒そうな様子にびっくり。受け取りにサインする際、いったんドアを閉めて室内で書いたのが実になんとも申し訳ない。
 そんで届いたのは『ゲット・ルーツ』第4回のゲラ。もともと毎回80枚という依頼で始まった月刊連載だが、4回目は第2章を終わらせたくて100枚くらい書いちまったとゆー増量ゲラである。いやただでさえ長いのにさらに増ページは申し訳ないと思って80枚で切る場合の切れ目も指定しといたんだけど、面白いから全部載せちゃおうという編集判断をいただいてありがたいかぎり。
 おまけに余白には担当編集者から第5回についての意見が書いてあり、それを読んだ途端に書きあぐねてた第5回の冒頭がぱぱぱーっと浮かんで一気書き。いくつかあるアイデアについてどうまとめようかと思ってたことに方向性を与えてもらった格好なんだけど、こういうのも実にありがたい。
 前回のブログにろくでもない担当編集者の例を書いたけど、今回は担当編集者とのコンビネーションがうまくいった例である。そういうことも書いとかないと、ネットで編集者の悪口ばかり言ってると陰口たたかれちゃうからね。
 いやこれまでだって、編集者のおかげでいい仕事ができた、勉強になったってことは結構いってるつもりなんんだけど、そーゆーのは人の印象に残ってないようなんだよなあ。『笑うカドには』とか『図書館の水脈』とか『チャーリーとの旅』とかさ。まあいいんだけど。


 思うに、僕にとってのいい編集者っていうのは、「こういうものを書かせたい」とか「こうやったら面白い」っていうビジョンをきちんと持っててきちんとこちらに提案してくれる人で、迷惑な編集者っていうのは曖昧な依頼しかできないくせに「こういうのはダメ」ってことだけ一生懸命なタイプである。何故か知らんが迷惑タイプにかぎって「自分の言うことが正しい」とか「自分の方がいいアイデアがある」とか思いこんでいて、一度ケチつけ出したら自分の意見を押しつけるためのことしか言わない傾向がある。
 僕としても自分の意見が100%正しいと言う気はないんだけど、迷惑タイプがあーしろこーしろと言ってくる別案って大抵は前回書いたような方法論の裏打ちがない思いつきなんだよね。そして意見がぶつかった場合、別案を拒んで自分の文章を書くのは作者としての権利だと思うんだけど、そこで我を通すと大抵ろくなことにならない。それは分かっちゃいるけれど、だからといって長いものに巻かれて自作を捻じ曲げるこたあないと思うのだ。
 そーゆーわけで、「小説すばる」とは縁が切れたし(“私の意見を聞かないなら仕事はやらない”だそーですので)、『文化祭オクロック』は版元を変えての発売となったわけですが(“私が意見をまとめるまで書くのをやめろ”の末に支離滅裂な別案を出されてあきれ果てたもので)、今回の『ゲット・ルーツ』はおかげさまでとてもいい環境で書かせてもらってる気がします。
 まだ予定の三分の一しか書いてないし、書き手として大変なのはこれからなんだけど、一部の読者の方から聞かれた「サニー多田良はもう出ないの?」って声には3月末発売の「小説推理」5月号でお応えできそうです。どーぞお楽しみに。