コガラとヤシャブシとフクロウ

さかさのコガラもかわいいね

 仕事中、小鳥の声が聞こえるなと思って顔を上げたら、窓の近くにコガラがいた。慌ててカメラを構えてシャッターを切り、今年初の野鳥撮影に成功。いや成功ってほどちゃんと写ってないけどさ。
 軒下に逆さにぶらさがって忙しく頭を動かしてるので、何やってんだろうなと手元の資料で調べてみたところ、「朽木に穴を開けて巣にする習性がある」なんて書いてある。我が家の軒先は朽木のにおいがするのだろーか?


 夕方のくろべーの散歩の後、暖炉で矢車の煮出しに挑戦。
 根付の染めや仕上げ、それから一般的な草木染めにヤシャブシを使うって話は本などで読んで知ってたが、原料の矢車玉ってのがどういうもんか分からなかった。そのうち手に入ってたらやってみようと思ってたんだけど、この冬の越冬地のご近所さんがある時「ほら、これだよ」なんて見せてくれて「そのへんにいっぱい落ちてるよ」と教えてくれた。ほほーそんじゃあ秋にでも拾いにくるかーと思ってたんだけど、越冬を終えて自宅に戻ってみたところ、根雪が消えた道端にあるわあるわ。なんのこたあない、ふと気づけばうちの周りはヤシャだらけだった。
 秋のドングリほどじゃないけど、散歩中にちょっと気をつけてればすぐにポケットいっぱいたまる。世間じゃ染料として矢車玉を売ってるそうだが、食うに困ったらこれ売って生き延びられるんじゃねえかってくらい落ちてるのだ。見上げれば、冬枯れの裸木がようやく新芽を膨らませ始めてる森の中で、ヤシャブシだかハンノキだかだけが枝じゅうにオシベやヤシャダマを生らせているではないか。資料によれば春先のごく早い時期にそうなるのだそーで、僕は一番いい時期にそれに気づくことができたようだ。
 ちょいと見回せば森の中には無数にその種類の木がある。てえことは木枝や地面を探せば星の数ほどヤシャダマが手に入るわけで、今後染料に困ることはなさそーである。とりあえず自作の木彫りに使ってそのうち服でも染めてみよーかなーってことにした。
 ネットで調べたら耐熱ガラスの容器で煮るといいらしいんで、これって耐熱かなあと思いつつ茶色い空き瓶を利用することに。散歩ついでにちょいちょい集めたヤシャダマと水を入れ、暖炉で煮立てることしばし。……さあできたかなと思ったら、瓶がぱかっと割れやがった。耐熱ガラスじゃなかったのだ。液は漏れるわ焚き火は消えるわ、幸先悪い出だしであった。


 んがしかし、たとえ失敗したって原料はすぐに仕入れられるのが森に住んでる利点である。
 意地でも今日じゅうに作ったるぞと意を決し、家の周りでヤシャダマ拾い。ついでに暖炉用の柴刈りもしとこうと小瓶&段ボール箱を手に森の中を歩く……と、近くの木の梢で何やら飛び立った気配。羽を広げた時の大きさに、もしもと思ってよく見たら、フクロウだった!
 警戒心の強い彼らは僕やくろべーの姿を見るとさっさと飛んで逃げちゃうので、見かける時はたいてい飛び去る後姿なんだけど、今日のフクロウくんはちょいと離れた木の枝に止まってこっちを観察している。おかげで愛くるしい姿を正面から眺めることができて得した気分。野生のフクロウを見ると、本当にそれだけで福がくるような気がするんだよなあ。
 しかし、どーして今日はすぐに飛び去らなかったのだろう。僕一人だったせいで警戒レベルが低かったのか、それとも木の実あつめで森の動物と化してたせいか。あるいは、いづぞやうちに飛び込んできたところを保護した三太くんがお礼を言いにきてくれたのだろーか。専門家によれば三太くんはその年に巣立ったばかりの若鳥だとのことだったが、今日のフクロウはそれより一回り大きいようだった。そんだけ三太くんが成長してたんだったら嬉しいが。
 なんてなことを考えながらヤシャダマと柴集めを終え、帰宅して無事に煮出しも終了。これもフクロウのご利益だろうか。