チェーンソーとスタインベック

1〜2年乾燥させて薪や木彫り材に

 ゴールデンウィークも今日で終わりだそーである。リゾート地に住む身としては人が減って道も混まなくなるのが嬉しいかぎり。森の木々も芽吹いてきて、今日はモミジイチゴの花が咲いてるのを発見。これからが一番いい季節だなーと嬉しくなってくる。
 いい天気ついでに夏みたいな晴天で、外にいるとTシャツ1枚でも暑いくらい。ほんの数日前まで寒くてファンヒーターつけてたのになあと思うとなんだか理不尽な気がするが、今日は庭仕事を片付ける予定の日。庭に延長コードを伸ばしてチェーンソーを構え、前から切ろうと思ってたミズナラの木に挑む。
 このミズナラ、家の西側に生えてて2階の屋根より高くなってんのだが、風が吹くと枝が屋根に当たるし、電線だか電話線だかに絡むとやばいなと思ってた。秋になってドングリが落ちる頃になると屋根の上をコロコロころがってく音が聞こえるのが風流ではあるのだが。
 で、まずは脚立にのってノコギリで屋根にかかる枝を落とし、次いでチェーンソーで幹を切断。ちょっとした電柱くらいあるのだが、電動鋸の威力でわりと簡単に倒せる。太い木を倒すのにも慣れてきたのか、補助ロープとかなしで見事に狙った方向に倒せたし。
 んがしかし。大変なのはそこからがだった。倒れた木はそのままじゃとても動かせないほど重いので、動かせる大きさに切断しなきゃならない。切り倒す場合の労働力を1とすると、輪切りに伐採するだけで20倍くらいの労力(チェーンソー動かすのも結構しんどいのだ)+枝を払ったり運んだりの労力がかかる。汗だらだらで働くもなかなか終わらず、やたら休憩挟んで水飲みまくった。


 休憩中、ふと気づくと近くの木に見慣れない鳥のつがいが止まってる。
 何だろなーと思ったら片方がひょいと横を向き、頭が青いことに気づいた。このへんで青い鳥っていったらオオルリくらいしかいないし、こんな至近距離で見たのは初めてだ。こういうのってちょっと嬉しい。
 カメラ持ってないのが失敗だったなーと思って次の休憩時にポケットに入れてきたが、そーなるとオオルリはどっか行って二度と見つからないってのが世の常である。仕方ないので切断して積み上げたミズナラの写真なんぞを撮っちゃったりなんかして。
 撮影してからふと気づいたが、手にはしっかりとミズナラのにおいがしみついている。まあ悪いにおいじゃないし、ミズナラ材でウイスキー樽をつくるのはこの芳香を活かすためらしいが、時々軍手をはずしてたくらいでこんなにしみつくんだからよっぽど濃厚なアロマなんだろうなあ。
 そうそう、ウイスキーの説明をするときなんかに「オーク樽で熟成」とかいうけど、あの場合のオークってのを樫と訳すのは誤訳なんだろーか? 大抵の英和辞典には「oak=樫」ってのってるけど、ヨーロッパでは楢類の木もオークというらしいんだよね。じゃあ英文和訳で前後関係から断定できない場合には樫と楢をどう使い分けたらいいんだ……ってなことを『チャーリーとの旅』を訳した時に迷ったのをふと思い出した。


 何はともあれ、よーやく片付いたのは午後3時すぎ。朝から干しっぱなしの布団を取り込むのもしんどいくらい疲れていたが、休む間もなく夕方には大事な家事が待っている。散歩だごはんだと期待に満ちた視線を注いでくる黒犬様のお世話である。
 下手に休むよりはこのまま出かけた方がいいかと散歩に出ると、こんなときに限ってくろべーのガールフレンドのアンズちゃん(雌ビーグル)に遭遇。こないだめでたく9歳になったってのに相変わらず女好きのくろべーは、クオンクオンと甘えなきして彼女の進む方についていく。
 しかしアンズちゃんの家は峠の向こうにあって、今の僕には登り坂を越えるのもしんどい。戻ってきてくれーとくろべーの名を呼ぶも、目がハート型になった黒犬は飼い主の声など聞いてない。こういう点では老け込まずに男のままなんだなーと、またもやスタインベックを思い出しつつ後を追う飼い主であった。