最終回脱稿と露天風呂覗き

これは覗きゴジュウカラ

 「小説推理」で連載中の新作長編『ゲット・ルーツ』の最終回原稿、第一稿が書き上がった。
 1年にわって連載してきた作品なのでさすがに感慨深い。毎回80枚で12回、往々にしてはみ出して長くなったから、多分1000枚くらいは書いたことになるんだろう。『カレーライフ』『自転車少年記』『ビールボーイズ』に続く大長編だし、久々に全力を出し切ったって感覚がある。いや他の作品で手を抜いてるわけじゃないけれど、やっぱりこういうのが僕の本道だって気がする。
 なんというか、「今回はこういう方向性を試す」って時と「今回はいろいろ試したことを踏まえて総力戦に挑む」って時とあると思うんだよね。今回はまぎれもなく総力戦を戦った気がするし、戦い終わって負けた気がしない。何に勝ったのかって言われるとよく分からんけれど。
 この最終回は十月末頃発売の「小説推理」12月号に掲載されて、その後で単行本化ってことになる予定。おそらくタイトルは『ゲット・ルーツ』じゃなくて他のをつけると思うけれど、皆様どーぞお楽しみに。
(ちなみに『ゲット・ルーツ』って題名は、担当編集者と根付にまつわる小説だからルーツって言葉を絡めたタイトルにしようかって相談してるときに、カフェのスピーカーからビートルズの『ゲット・バック』が聞こえてきたからつけたものだった)


 何はともあれほっと一息ってことで、午後からリゾートホテルへ。
 プールでざばざば泳いでて、平日なのに妙に混んでるなーと思ったら、世間じゃ祝日の谷間で秋の行楽シーズンなのね。知らなかった。
 そのせいなのか何なのか、プールから上がった後でホテル内の温泉で露天風呂に入り、風が気持ちいいなーと上を向いたたら、客室棟の1室から男湯を覗いてるおねーちゃんたちを発見。結構びっくりした。
 何度もきてる温泉なので、男湯の露天風呂は周りの建物から見えちゃうよなーとは思ってたのだが、客室の窓際に立ってまじまじとこっちを見てる宿泊客ってのは初めて見た。しかもそいつら、僕とばっちり目が合ってもまるで臆することなく見てやんの。
 別に見られて困る感覚はないが、向こうの方が部屋番号ばればれなんだから苦情いわれても困るだろうし因縁つけられたら危なかろうと思う。男湯なんて見たってしょーがなかろうし、僕の他にもおっさんばっかりの状態じゃあ見てたって面白くはないと思うんだが、彼女たちは入れ替わり立ち替わり窓際に立っている。学生かOLのグループ旅行って感じだが、彼女たちの様子を見ている方がよほど興味深かった。
 笑顔で何か喋りながら見てる二人組がいたかと思ったら、そいつらが引っ込んで髪形や服の違うのが現れ、さらに別のが……と、この客室はいったい何人部屋なんだと不思議になった。まあ他の部屋の仲間も呼んだのかもしれないしリピーターもいたのかもしれんが、ぼけっと見上げたかぎりじゃ少なくとも4人以上いたと思うんだよなあ。
 中でも最後に一人で現れて、無表情にじーっとこっちを見てた奴は結構こわかったな。さすがに逃げようかと思ったけど、いま立ち上がると全身丸出しになるからそれもまずいかなーなどと思ってるうちにのぼせかけちまった。
 結局窓際に誰もいなくなったタイミングで上がったけれど、こういうのって男女が逆だと大騒ぎになるのかなと思う。きっとあの部屋の女の子たちは滞在中に折に触れて男湯を確認するんだろーなーと思いつつ、裸の男たちを見ながらどんな会話を交わしてんのかと思うと恐ろしいもんがあるね。