対照的なチェスクラブと高圧的なコミュニティーセンター

 ちょっと腹立ち日記。
 先日ネットを検索してて、武蔵野チェスクラブというのがあるのを知った。毎月第3土曜日に例会というのをやってて、気軽にチェスできるらしい。ちょうど「1月15日(土)13:00〜17:00吉祥寺南町コミュニティセンターで開催です」と書いてあったし、いま住んでるところからも近いので行ってみようかと思い立った。
 わりと気楽な集まりのようで、“初めての人間でも事前の連絡は必要なし。会費もないので例会が開催されている日時なら好きなときに会場へ来ればいい”みたいなことが謳ってあった。それなら僕でも立ち寄りやすいし、このクラブのサイトを読んでるうちに個人的な興味もわいたので(かつて村上春樹本を書いた久居つばき氏を連想させるキーワードがやけに多いのだ)、ちょいと覗いてみようと思ったのだ。
 んがしかし。15日土曜日の13時すぎに会場の吉祥寺南町コミュニティセンターに行ってみたってのに、それらしき集まりの人なんていやしない。施設内の各室の利用状況みたいな表示板にもチェスクラブのことなんて何も書いてない。どういうこったいと思って入り口付近できょろきょろしてたら、この施設内の職員とおぼしきおっさんに誰何された。
 どうも偉そうな喋り方をするおっさんで、「何ですか?」と尋ねてきたのでチェスクラブのことを説明すると、「ああ、来てないよ」だそうな。「○○さんの関係の人?」とか尋ねてきたが、こちとら関係者の名前など知らない。何やら施設の書類に住所と名前を書かされたあげくに「じゃあそのうち来るんだろうけど今は来てないです」「そこがサロンなんでそっち行ってください」なんて言い渡された。
 あるいは「居てください」と言ったのかもしれないが、極めて「あっち行け」ってニュアンスを感じさせるおっさんであった。ここは公共施設のようだから職員だったら武蔵野市の公務員だと思うんだが、公僕として利用者にサービスする意識はないらしく、自分の縄張りに入ってきた目下の余所者に対する物腰なのだ。サロンとやらにはテーブルセットがたくさんあってここに慣れてるとおぼしき老紳士や老淑女たちが囲碁や将棋をたしなんでおられるが、そこを指さされたって誰をいつまで待てばいいのか分かりゃしない。
 まあしかし、おとなしく言うことを聞いておいた。おっさんの態度は不快だったけど、接客業じゃなく自分の都合で仕事してるだけの公務員って多いし、こっちは武蔵野市に税金払ってるわけでもない。施設側からすりゃあ利用方法も弁えてない怪しい大男ってなもんだろう。やけに暖房がききまくったサロンとやらに入り、椅子に座ってしばらく待った。
 だけどだんだん馬鹿らしくなってきた。ネット上で日時を指定しておいて誰もいなけりゃ誰かが来た場合の想定もしてない集まりってのは、要するに仲間内で公共施設を利用して遊んでるだけで対外的な責任感は何もないってことだろうし、ここでぼけっと待ったあげくに無責任な責任者がやってきたとしたって、そいつと楽しくチェスして遊べるかって考えりゃ、とてもそういう気分にゃならない。待つだけ無駄ってもんだし、ここで粘らなくたって気楽に楽しくチェスできるとこならすぐ近くに別にあるのだ。口直しにそっちで遊んでいくこにした。


 つうわけで、不愉快なコミュニティーセンターを出て自転車で走ること3分、もっと吉祥寺駅に近い、吉祥寺チェスクラブってところに寄る。
 ここは有料だけど、チェス道具もしっかり揃ってるし親切なオーナーやスタッフが初心者相手にもいろいろ教えてくれる。メインの客層は競技としてチェスをやってるタイプの人たちのようで、僕なんかとても勝てやしないのだが(これまで何試合もしたけど1回しか勝ったことない)、それでも何やかやと遊ばせてもらったり勉強したりできるのが嬉しい。
 そういう意味で、金銭の授受ってのはある意味じゃ責任の所在をはっきりさせる儀式でもあるんだなと思う。税金ってのはその授受感覚を麻痺させるシステムだから、ある種の公務員や政治家たちは一般市民から金もらってる意識を持ってないのだ。僕の経験からしても、無料で原稿書けって言ってくる奴にろくなもんはいないし、取材費なんぞ払う気はないって新聞記者にかぎって態度でかいもんなんだよね。
 それはともかく、吉祥寺チェスクラブでは今日は公式戦が行われていて室内に緊張感がみなぎってたが、そういう様子が見物できるってのも勉強かなーなどと思っている。こないだは講演会が行われてたし、新春の席料無料デーは見るからに賢そうな若者たちでにぎわってたし、こういうところでチェス文化にまつわるあれこれを見ておくと、いつかチェス小説を書く際に役立つかなーと思うのだ。いや別に書く予定もないのだが。


 今日のまとめとして、対照的な2つのチェスクラブのリンク先。距離的にはこんなに近いのに、なんでこんなに違うんだろうってのが面白いくらいです。
 まずは無責任な方のチェスクラブ、武蔵野チェスクラブのサイトはこちら。興味ある方は久居つばき氏との関連を推理してみてください(いやまったく無関係かもしれないんだけど)↓
http://www.k2.dion.ne.jp/~narnia/chess/musashino.html


 そしてまともなチェスクラブ、吉祥寺チェスクラブのサイトはこちら。↓
http://www.ne.jp/asahi/chess/kichi/
 関係ないけど、ここのオーナーの浜根さんはエスニック民芸雑貨店のチチカカの創業者だった。実をいうと、僕が19になる年に上京して自分用の食器として初めて購入したのが渋谷のチチカカで売ってた緑色のガラスのゴブレットだった。39歳の冬に2度目の上京をして立ち寄ったチェスクラブがあのチチカカとつながってたのかーと思うとなんだか不思議な気分である。