クローディアの推薦文とアリエッティの原寸模型

豆本と黒犬

 すっかり筆不精な今日この頃、2日連続でブログを書くなんて久々な気がするけど、おすすめしたい企画があるのです。――三鷹市芸術文化センターでやってる、「宮崎駿が選んだ50冊の直筆推薦文展」、入場無料なわりにいい企画だぞ! 児童文学好きの人や本を紹介したりあらすじ書いたりする人は見ておくべし! 開催期間が3日と短く、明後日3月6日(日)までしかやってないんだけど……


 昼まで仕事して、こないだ見つけた三鷹駅前のおいしいカレー屋さんで昼食、食後に駅周辺をぶらぶら散歩してたら、本を読む少年と犬が描かれたポスターが目についた。見れば、岩波少年文庫400冊から宮崎駿が50冊を選び、その直筆推薦文を展示するという企画らしい。開催期間は今日から3日間、場所は帰り道にある三鷹市芸術文化センターで、入場料は無料と言われたら……そりゃあ寄ってみるよね、やっぱり。
 僕はもともと、出版社が夏のキャンペーンでよくやってる「○○文庫の○冊」みたいなのが好きなのだ。肝心のキャンペーン対象商品の文庫本はめったに買わないってのに、本の紹介文をまとめた小冊子が妙に好きで、よくもらって帰るし一時期からヨンダ君のやつをコレクションしてるほどである。そこにもってきて、岩波少年文庫宮崎駿ってチョイスは絶妙だよなー。
 会場は直筆推薦文よりもパネル展示がメインのようで、ジャンルごとに本の表紙や挿絵のコピーやあらすじ紹介が並んでいる。それを見ていくだけでも楽しいし、推薦文の拡大コピーと活字化したものが並んでるので宮崎さんの推敲の跡を辿るのも興味深い。個人的な感覚で書かれた推薦文の中には「まだ読んでない」とか「最後まで読み切れない」みたいなのもあったりして微笑ましいし。
 中でも一番心ひかれたのは、『クローディアの秘密』の推薦文で、なんとこの作品を、上野を舞台に映画化しようという構想があったらしい。それを聞いただけで、僕の頭の中には「左甚五郎作のネズミが高村光雲作の老猿にそそのかされて国立博物館を抜け出し。動物園に入りこんでトラの檻に迷い込み……」なーんて光景が思い浮かんぶのである。国立博物館がこわいって理由でボツになったらしいけど、そんな映画なら見てみたいなあ。


 会場には他にも、ジブリ系のお土産売り場があったり『借り暮らしのアリエッティ』のジオラマがあったり。ジブリ美術館にあってもおかしくないものが置いてあるのはご近所だからだろうか。――ジオラマっつっても、ものが『アリエッティ』だけに、これはミニチュアじゃなくて原寸大なんだなーと気付くのってちょっと意外で感動的である。なにしろ空き瓶とか植木鉢とかは普通にあるやつを使ってるんだもんなあ。
 会場に2つあったモニター画面では『アリエッティ』の予告編が流れてたりジブリとは関係なさそーなアードマンのクレーアニメが流れてたり、はたまた子供用の塗り絵&お絵かきコーナーがあったりと、とりとめない雰囲気もあるけれど、そーゆーのも楽しいっちゃあ楽しい。企画運営は「みたか都市観光協会」ってところらしいが、こういう展示を考えた人たちってのも楽しんでやってたんじゃないかなーと思えてくる。
 そして、特筆すべきはこの会場の展示内容を1冊にまとめた「会場限定スタジオジブリ特製『ミニ本』ってやつ。各日限定150部しかないうえにショップで1050円以上買い物した人だけもらえるんだそうだが……小ささといいフルカラーな感じといい、これが実にいい感じなのだ。書き損じや推敲箇所は避けたようだけど直筆文の写真もあるし、宮崎ファンや児童文学ファンにはたまらんアイテムだろう、これは。
 無論、おまけ商法に弱いおいらは、このミニ本ほしさに買い物をすることに。あれこれ迷い、結局ショップに並んでた岩波少年文庫を2冊購入したんだけど、さてその2冊のタイトルは、何と何でしょう……なーんてクイズを出しても、正解者は出ないだろうなあ、やっぱり。
 地下一階の展示会場を出て一階に上がると、ロビーの椅子に座ったご婦人がご機嫌な表情でこのミニ本を読んでいた。よく見ればさっき会場で見かけた人である。本になってる内容は展示室でも見られたわけだし、なにしろ入場無料だから戻って見直すこともできるわけだけど、こうやって一人ゆっくり本として読むのが嬉しい感覚って分かるなー。
 そんな彼女の姿も含めて、とても素敵な展示でした。残り2日、時間のある方はぜひどうぞ。