アジサイとイケダン

チェスルームに飾ってみました

 台風接近中とかで、終日雨の火曜日。
 くろべー散歩も小降りとか小やみになったタイミングを見計らっていくわけだが、雨には気をつけてたってのに庭のアジサイのせいで左半身がぐっしょり濡れてしまった。――元気よく茂ってた通路部分にまで枝葉を伸ばしてたのを、きれいな花が咲くならいいかと見逃してきたのだが、通り過ぎる際に傘が触れ、葉の上にたまってた水滴がずしゃーっと僕にかかったのである。
 上はロングTシャツ一枚って格好だったので、体半分濡れると結構なダメージ。おのれアジサイもう許さんぞと植木鋏を手にし、通路にはみ出た部分を伐採しまくり。せっかくなので花だけ空き瓶にさしてみた。生け花の趣味はないけど、こうして切り花にした後も花の色が変化するのかどーかは楽しみだ。


 午後の仕事中、というか仕事をさぼってる最中、ふと思い出して近所のシネコンの上映スケジュールをチェック。たしか『行け!男子高校演劇部』は夏休み公開だったよなと思い出したのだ。
 なにしろ演劇を扱ったコメディー映画だし、舞台『カレーライフ』の稽古場や舞台裏で主演の中村蒼さんの姿を見てきた身としては二重に楽しめそうだ。新潟の大千秋楽で涙の座長挨拶を見て以来、この映画は見ようと決めてたのである。
 だけど調べてみたらうちの近所じゃ上映しないらしい。なんだよーと落胆、ツイッターでぼやいたりしたのだが……
 その直後、念のためと思って映画の公式サイトもチェックしてみたら、ニコニコ動画でネット試写会って企画があると知る。しかもそのイベントの開催日時、ちょうど今日で約1時間後に開演らしい。なんちゅうタイミングの良さだと感動し、今のうちに夕方のくろべー散歩を済ませておくことに。
 パソコンの前に待機したのが5分前くらい。こういう人数限定企画って見るの難しいかもなーと思ってたが、アクセスしてみたらちゃんと画面が開いた。こりゃいいやと、コメント欄は非表示にして映画鑑賞。
 感想をどう書くか迷うとこだが……内容については触れないまま、「これは映画館で見た方がいい!」と断言できる映画だった。「コメディー映画は観客の笑い声が加わって完成する」って言葉を実証してるような映画だと思う。仲のいい友人数名で繰り出し、みんなして大笑いするのがいいんじゃなかろうか。

 序盤の方で編集で短く詰められそうな間が散見されたのだが、それももしかすると舞台でいうところの「笑い待ち」として機能する間なんじゃないかって気がする。客層がハマった時にはその間すら心地よくなるだろうし、そういう時にスクリーン前にいられたら最高だろうなっていう映画であった。
 上映時間が85分と短いのも、すかっと笑って気持ちよく終われる時間かもしれない。……個人的には、尺に余裕があるならもーちっと脚本いじって終盤に散発的に置かれたエピソードと連関させる伏線を引いときゃいいのになと思ったが、まあこういうのは結果論だ。馬鹿馬鹿しいなーと思いながら映画館内の笑いの渦に加わって、友達と一緒に面白かったなーと語らいながら帰るのが一番だろう。
 もう一つ、名優の名言を引用するなら、「いい役者の条件とは、笑いの芝居ができること」って言葉もあった。そういう意味で、やっぱり中村蒼は大物になるだろうなー。願わくば、あまりシリアス芝居に特化せずにちょこちょこコメディーをやる役者になってほしいぜい。


 ネット試写会が終わり、画面を閉じた直後、来客の声がした。ご近所さんが釣りの収穫の川魚をお裾分けにきてくれたのだ。
 しかも料理したてのほかほかで、ヤマメやイワナをムニエルにしたものに野菜たっぷりポテトサラダまで添えてある。――楽しいコメディーを見た直後にこの差し入れってのも絶妙なタイミングだと感動しつつ、冷蔵庫から冷えたビールを取り出した。
 そのまま晩酌に突入、イケダンとアジサイに乾杯って感じの夜であった。