医学の進歩と笑顔の彫刻

大中小と並べてはいポーズ

 昨夜、マイケル・J・フォックスの『ラッキーマン』って自伝を読み終えた。ずいぶん前からちょっとずつ読んでた本なんだけど(僕はそうやって何冊も並行して読むことが多い)、ぬるめのお湯に長くつかりながら読んでたら読了したのだ。内容的にもしっかりしてたし読後感もよかったし、『バック・トゥー・ザ・フューチャー』ファンには是非薦めたい本である。

 彼の生い立ちや俳優としてのサクセスストーリー、そしてパーキンソン病の発病と闘病が語られるんだけど、単なる自伝とはまた違った味わいがあった。映画の裏話や闘病記の中、演技論や人生哲学みたいなことがウィットある文章で語られてて、読みながらいろいろ考えさせられるのだ。翻訳特有の読みにくさもあるし時系列を前後させる構成のせいでひっかかるとこもあるけれど、全体として読みやすく編まれたノンフィクションだった。
 何年か前に邦訳が出て話題になったのを覚えてたけど、アメリカで刊行されたのは2002年らしい。その頃マイケル・J・フォックスは、10年以内にパーキンソン病の治癒方法を見つけることを目的に財団を設立したのだそうで、その後どうなったのかなーなどと思いながら本を閉じた。
 そしたら今朝、「ボクらの時代」ってトーク番組に永六輔さんが出てて、パーキンソン病との闘病のことを語っていた。シンクロニシティーってほどじゃないが、なんとも絶妙なタイミングだなーと感動。一頃よりずっと活舌もよくて健康そうな永さんの姿に、医療の進歩の実例を見せてもらった気がした。それがマイケル・J・フォックス財団の功績なのかは分からないけど、どこかで繋がってるといいなーと思う。


 話は変わるが、先日読者の方から嬉しいプレゼントをいただいた。はしもとみおさんの彫刻で、うちのくろべーをモデルに製作してくれたものだ。
 ネット画像を参考に実物は見ないで作っていただいたのだが、写真とは違うアングルから見るのが一番似てる気がするから不思議なもんである。大胆に省略してる箇所もあれば表情を演出するための細かい技法なんかもあって、立体の実物を手にするといろいろ勉強になるもんだなーと思う。
 はしもとみおさんの彫刻を知ったのは、根津の根付屋さんことギャラリー花影抄さんがツイッターリツイートしてたからなんだけど、笑顔の動物像がすごく魅力的なのだ。彫刻ってえと美術室のレプリカ石膏像みたいに無表情でどこか視線がうつろなイメージが強かったもんで、表情の力があるものっていいなーと思うのだ。根付にもそういう表情豊かなものや笑いを誘うものって多いし、僕の小説でも短編『トゥールー・バンブー』や長編『イン・ザ・ルーツ』でそんなことを書いたっけな。
 で、これも今朝たまたまTVで船越保武さんの彫刻作品の映像を見かけたらすごく表情が豊かで驚いた。苦悶の表情のイメージがあるキリスト像まで安らかに彫られてたし、女性像とかはすごく優しげであたたかな表情なんだよね。一度実物を見たいなーと思うんだけど、どっかに泊まりがけで旅行しないといかんかな?

舟越保武・石と随想

舟越保武・石と随想

 聞けば晩年の船越さんは利き腕の自由がきかなくなっても彫刻の創作を続けたそうだ。僕はそこまでじゃないけどこないだ怪我して左手の指に違和感が残ってるので、晩年の船越作品に励まされた気がした。今は椿材で根付だかペンダントヘッドだかを作ってるんだけど、それを彫る時の気持ちの入れ方が変わってきたりなんかして。