越冬地の散策と食文化の感動

水車のある散歩道

 周囲が雪山と化しつつある山荘から街中の越冬地に移住して1週間。なかなか楽しく過ごしている。
 ぼちぼち生活環境を整えつつ、朝夕のくろべー散歩で近隣を散策する毎日。飲み屋やラーメン屋を開拓したり、前から好きだった図書館や蔵元やおにぎり屋やパン屋に通ったり。地震や雪まで経験して、なかなかバラエティーに富んだ一週間だった気がする。
 やっぱり暮らしてみると見えてくるものってあるもので、街角の何げない光景とか、地元の人に教わったこととかに驚いたり感心したり。僕はもともと、一人でふらっと知らない土地に旅行するのが好きだったのをふっと思い出すような毎日。
 くろべーと暮らし始めて以来、旅行ってあんまりできなくなった。一人暮らしで大型犬を飼うのって大変だからってのもあるし、そもそも出かけたいって気持ちが減ったってのもある。この冬は旅情を思い出しつついろいろ勉強する、充電期間ってことにしよう……とは思ってるのだが、年内は細々した仕事をやっつけなきゃならないし、年明けは『司書室のキリギリス』をぐわっと手直しして、確定申告の帳簿作業をして……と思うと意外とやることあるなあ。困ったもんだ。


 この1週間、印象的だった光景をいくつか。
 駅前の住宅地にある小公園、子供の姿は全く見かけない。無人の遊具の中、ソーラー電池で動く線量計のデジタル数字だけが光ってる。不気味というか象徴的というか……
 町のそこかしこで見かける「がんばろう○○!」って張り紙。そして実際に頑張ってる人たち。この地元を好きな人や、わざわざ東京から高い交通費をかけて遊びに来てる人。そういう人たちと飲む、ことのほか美味しい地酒。酒とか漬物とか、伝統的な醸造文化を普通に味わえる町の贅沢さを感じる。
 町の風景がふっと変わったと思ったら、避難所というか仮設住宅群がずらーっと並んでいる。そしてそこと隣り合ってかなり広い駐車場。車社会だから当然っちゃあ当然なんだけど、立派な車がずらっと並んでる様になんだか迫力を感じてしまう。
 古い住宅を改造して建てましたようなギャラリー。とてもきれいな布が並んでいるのに感心してたら、そこの御婦人が染めたもんなんだとか。聞けば染織の勉強のために東京や愛知までいったり、植物の勉強のために高崎まで行ったりしてるらしい。「高崎の植物園」って言われて何か思い出すなーと思ったら、高校時代にマラソンコースで走らされた山道の脇にある施設だった。20年以上思い出さなかった風景がふっと蘇ってきた。