石段ビフォーアフターと狛犬レファレンス

石段ビフォーアフター

 先日、サイクリングで立ち寄った某神社で、面白い狛犬たちに出会った。
 2対の狛犬がいたんだけど、石段をのぼる前には派手なデザインの一対。頭が大きめで巻き髪がぶわっと盛り上がってる様が迫力だった。そして石段をのぼってみたら妙にシンプルなのが一対。どこかユーモラスな風貌は、見た途端にくすっと和ませてくれる空気を醸し出していた。
 まるである種の女性のおめかし顔とすっぴん顔のようで……とか言うと一部の反発を招くけど、ほんとにそんな感じで面白かったのだ。楽しい気分でお参りして、ついでにケータイで画像を撮影しておいた。
 その画像を見比べてるうちに、どういう経緯でこれほどの違いがある狛犬が同じ参道上に設置されたんだろうと気になってきた。一応、由緒ある観光スポットの神社だし、製作年代とか作者の違いが分かるかなーと思って、図書館に行ったついでに調べてみることにした。
 しかし郷土コーナーで何冊か調べてみても、神社についての記載はあっても狛犬についての記載はない。レファレンスコーナーにいって尋ねてみると、司書さんはパソコンを操作した後で電話をかけはじめた。
 県だか市だかの、文化財の調査を行ってる部署に問い合わせてくれたのである。そこまでしてもらえると思ってなかったし、結局担当部署で調べてくれた後で僕に電話連絡くれるってことになり、そんなアフターサービスまであるのかーとびっくり。
 そこまでしてもらっていいのかなと恐縮しつつ、「いや実は、単に狛犬の本はどの書架にあるかだけでも教えてもらえればと思ってまして……」と打ち明けたら、神道のコーナーに案内してもらえた。


 そこで『THE狛犬!コレクション』と『狛犬かがみ』って本を見つけ、早速閲覧席へ。ページをめくってみると、これがどちらも狛犬の造形美を堪能できるビジュアル満載ですごく楽しい本だった。

THE 狛犬!コレクション―参道狛犬大図鑑

THE 狛犬!コレクション―参道狛犬大図鑑

狛犬かがみ A Complete Guide to Komainu (Japanesque)

狛犬かがみ A Complete Guide to Komainu (Japanesque)

 おまけに2冊とも作者が豪華。『THE狛犬!コレクション』の著者は三遊亭円丈師匠で、そういえば雑誌の書評やテレビでも紹介されてた本だし、『狛犬かがみ』の著者は「たくきよしみつ」となってて、何か聞き覚えあるなーと思ったら漢字で書くと鐸木能光、小説すばる新人賞の大先輩ではないか!
 とても閲覧席で読み切れないほど充実した本だったので、その2冊は借りて帰ることに。図書館の後は観光案内所に回って尋ねてみると、ここでは『神の鑿』っていう資料を紹介してもらえた。「自費出版で出された方が寄贈してくださったもので――」と言われて作者名を見てみたら、こちらも「鐸木能光」と書いてあってびっくり。
 おまけに帰宅してから図書館から電話をいただいて、文化財課での調査結果を聞かせてもらった後で、「実は自費出版で『神の鑿』という資料がありまして――」と、ここでも鐸木能光さんに行き着いた。どうやら作家であると共に狛犬研究の第一人者であられるようだ。趣味の分野でこういうカッコいい本を出すのって憧れちゃうなー。
 こうなるとネットでも調べてみようって気になって、検索したら、見事に出てきた「狛犬ネット」なるサイト(http://komainu.net/)。ここの、「日本一○○な狛犬」ってコーナー(http://www.asahi-net.or.jp/~dw7y-szk/koseiha.html)は、狛犬に興味ない人でもぱっと見るだけで楽しいので是非ご覧あれ。僕ぁ個人的に、「日本一にこやかなキツネの親子」ってのが好きだなあ。