遠隔操作の暗号と新刊告知の挑発

美麗な表紙カバーに感謝♪

 のんびり起きて、昼前にラーメン屋で飯くってたら、テレビから遠隔操作事件の容疑者逮捕ってニュースが流れてきた。
 もちろん今の時点では誤認逮捕の可能性はあるわけだけど(事件が事件だものね)、なんとなく今度の報道は警察にもマスコミにも確信があるように感じる。――なにしろ、「10日朝に逮捕」ってニュースなのに、ニュースでは容疑者の6日や9日の様子を映した映像が流れてるのだ。これってどういうことなんだろう?
 警察から事前に捜査情報がもれていたのか、あるいは警察とは別にマスコミの方でも「こいつが犯人に違いない」と目星をつけてたのか。なにしろ容疑者は同様のネットを介した脅迫や強要で複数の逮捕歴のある前科者だってことだしなあ……
 その逮捕歴の中で僕も知ってたのは、のまネコってキャラクターをエイベックスが商品化しようとしたらネットに殺害予告が出て慌ててとりやめたって事件。犯人が捕まってたことも知らなかったが、ネット上では「のまネコ事件」と呼ばれて話題になってたんだとか。
 そして今回の事件、容疑者の逮捕にいたった動かぬ証拠は、雲取山と江の島の防犯カメラ映像らしい。犯人は雲取山でUSBメモリを埋め、江の島で猫の首輪にマイクロSDカードをくっつけたんだけど、そのどちらの防犯カメラにも容疑者がしっかり写ってたらしい。「顔の見えないネット犯罪」といいつつ、余計なことして墓穴を掘って、遠隔操作が組織捜査に負けたわけである。
 で、ふと思ったんだけど。
 雲取山は東京と埼玉の境にあるらしいから、捜査をかく乱するための場所として選んだと思えばまあ納得はいく。では、江の島はどうして選ばれたんだろう?
 「のまネコ事件」で捕まったのが今回の犯行の動機だと目される容疑者は、わざわざ防犯映像に写り込む危険を冒してまで江の島まで行き、わざわざ猫をつかまえて犯行の証拠を残した。捕まりたくない奴がそこまでするのは、何か必然性ありそーだ。「ネットには詳しくても防犯カメラまで知恵の回らないお間抜けさんで、その日たまたま海を見たくなった」って説明じゃ、ちょっと納得いかないよねえ?
 で、気付いたんだけど。
 「えのしまのねこ」って言葉の中には、しっかり「のまねこ」って文字がはいってるよね? これ、何か狙ってたんじゃないかな?
 そう考えると「くもとりやま」ってのも、なんだか子供の好きな暗号なぞなぞに使えそうな地名である。二つの地名を組み合わせると、何かしらメッセージが浮かびあがってくるんじゃないかなあ?
 しかしそこまで考えたものの、僕は一連の事件にまつわる情報に疎いので、これ以上の暗号解読は無理みたいだ。どなたか詳しくて賢い方、ちょっと推理してみませんか?
 ――っていうか、複数のマスコミが容疑者の事前映像なんぞをしっかり撮影してるのは、最初からこの暗号ってバレバレだったってことじゃないか、ってのが僕の推理。さて当たってるかな?


 さて、ここまで読んでくださった方は知的な推理ゲームがお好きと拝察いたします。――そんな読者諸賢に、ぜひおすすめしたい1冊が。
 そんなわけで、新刊告知です。
 文庫版『シチュエーションパズルの攻防』、創元推理文庫より2月26日刊行予定!
 なんで今日のこの事件に絡めて宣伝したくなったかといえば、表題作を雑誌に発表して以来、足かけ6年にわたって誰も解けなかった謎の答えを、文庫版あとがきとして発表してるからなのです。しかもタイトルにちなんで、それ自体をシチュエーションパズルとして。
 なので知的遊戯の好きな方にはぜひ読んでいただきたいなーと思ってます。そして、僕がこの作品に組み込んどいた仕掛けがミステリーとしてアリなのかナシなのか、ぜひご判断いただきたい。
 正直、作中でしっかりと問題を出題してるし、答えに至るための明らかな伏線もしっかり組み込んであるのです。なのに今まで、だーれも正解を指摘してこなかったことが、僕はどうも釈然としないのです。「どーしてマスコミは容疑者の逮捕前の映像を押さえていたのだろう?」ってのと同様、「この作品を読んでる自称ミステリマニアな人々はどーして謎解きをしなかったのだろう?」ってのが気になってるので、今回の文庫版でそのあたりがすっきりすると嬉しいかぎり。
 僕自身はミステリマニアじゃないし正統派のミステリーを書こうって意識も低いんだけど、この作品に関してはいささか挑発的な言い方をしてでももうちょっと考えてみたいなと思っております。

シチュエーションパズルの攻防 (創元推理文庫)

シチュエーションパズルの攻防 (創元推理文庫)