越冬地の撤収と健康食の白笹

霧は夕方にはきれいに晴れた

 3月も末になり、越冬地を引き払って自宅山荘への引っ越し。朝から荷物をまとめたり掃除したり。――しかし僕は、片付けや掃除が大の苦手である。不動産屋さんには12時に鍵を返すと言ったのに、40分ほど押してしまった。
 ようやく一段落して車への積み込みを終えた後、マンション向かいのラーメン屋へ。入店した瞬間、何故か店員さんが目を丸くした。……ほんとに道路を挟んで真向かいなので、僕が引っ越し作業をしてる様が店内から見えてたんだとか。
 すっかり顔なじみになってるので、注文する前から裏メニューのギョーザやらチャーシューおにぎりやらをサービスで出してくれた。ありがたくいただきつつ、いい町だったなーとしみじみ。
 勘定してみると、冬が来るたびにいろんなところに住む暮らしを始めて6年になる。越冬地もいろいろあったけど、今回暮らした福島県白河市が一番肌になじんだような気がする。そりゃまあ、土地ごとにいいとこ悪いとこあるもんだけど、誰も知り合いがいない状態でふらっと居ついて、一番居心地がよかった気がするのだ。
 城下町の歴史の古さも今のいろんな取り組みもとても魅力的だったし、図書館は僕の大好きな場所となった。一緒に飲んだり遊びに行ったりする友人も結構できたし、美味しいお店もたくさん見つけた。機会があったらまた住みたいと思ってるし、仕事があるならいっそ定住地を構えたっていいんじゃないかと思ったりもする。僕がちっとでも金を使うことが復興支援につながるのかと思えば、多少の無駄遣いだってすべきことのような気もするし。


 とはいえ。山深く分け入った森の中にある我が山荘も好きなのである。
 到着時には霧が立ち込めてて50m先もろくに見えない様にまいったなーと思ったし、家に入ったらリビングの室温が3度で驚いたが、それでも気持ちいい場所なのだ。空気も澄んでるし、人里離れた森の中で稜線を眺めてるだけでリラックスした気持ちになれる。
 くろべーもそうなのか、車からおりるなり森の下生えの笹をぱくっと齧ってむしゃむしゃ食っている。越冬先や旅先では雑草はもちろん、笹を見つけたって食べやしないんだけど、自宅周りの笹だけはぱくぱく食べるのだ。なにか特別に美味しい品種だったりするのだろーか? 老犬の割に元気だとか毛艶がいいとか言われるのは、もしや散歩のたびの笹食や毎晩の晩酌(僕に付き合って缶や瓶に残ったのを舐める)のおかげだったりするのだろーか?