限定バジルラーメンと羊毛ワークショップ

寝てる横にボール、本物でもよくある図

 午前中、車に乗っていそいそとお出かけ。
 つっても恋愛方面の用事ではなく食欲方面の用事である。最近気に入って通うようになったラーメン屋のご主人から、自慢の裏メニューの特製塩ラーメンを食べてみてほしいと誘われたのだ。ついこないだ、水曜日には炭火焼屋さんに「イセエビの具足煮」って裏メニューを食べに行ったし、なんか裏メニューづいてるなあ。
 で、某ラーメン屋さんの裏メニューの塩ラーメンってのが、注文の多い料理店的にいろんな条件を満たさないと食べられないらしい。「気に入った客にしか出さない」「ちょっとしかとれない部位を使うので1日1杯限定」「比内地鶏を用意するので2日前に要予約」「1杯作るのに手間がかかるので開店直後に来てほしい」などなど。事前にご主人からいろんな情報を聞いてたので、それだけで期待が高まる。知らんうちにアクセルふかしてたのか、予定より5分ほど早めに着いたりなんかして。
 いったいどれほどのラーメンだろうと思って食べてみたのだが、確かに言うだけのことはあり、2日前予約して楽しみにして来るだけの価値はあった。予想を超える美味さの塩ラーメンに、予想のつかない味の演出が加えられてたのだ。総合的な演出までひっくるめて、僕が今まで食べた中で一番美味かった塩ラーメンだといっていい。未体験の人には是非食べさせてあげたい――いや一日一杯限定だから人にすすめるなら俺が食いたいくらいだけど、どーしてもって人には教えてあげます。
 どういう味かというと、まず第一丼には麺とスープとネギだけの塩ラーメンが盛りつけられている。もともと手打ち麺の見事な味わいと食感が気に入って通うようになった店なので、このシンプルな状態でまず美味い。そして鶏ダシスープだが、好きな麺をすする前にレンゲで何杯も飲んでしまったほどの味わいだった。よく塩ラーメンをほめる際に「あっさりしているのに深い味」とかいうけれど、まさにその究極である。
 ただし、「あっさりしてる」と言うと語弊があるかもしれない。レギュラーメニューの塩ラーメンより明らかに油分が多めで、スープが黄色っぽく見えるほどなのだ。なのに脂のしつこさを感じないのが不思議だなーと思ったのだが、それこそが比内地鶏の力なんだそうな。自身ラーメンマニアなご主人は、この比内地鶏を手に入れるために山形まで通いつめてたんだとか。前にラーメン行脚をしたり地鶏農家と交渉したりしてたって話を聞いた時には、ふーん熱心だなーと思う程度だったけど、実際その食材の凄さを味わわせてもらうとそれを入手するためまでの努力の凄さが垣間見えた気がした。
 で、その第一丼だけでも充分に満足だったんだけども、丼はもう一つ出された。その第二丼に入ってたのは、豚肉の希少部位のバジル焼き。希少部位ってのがどこだかは聞かなかった(つうか聞いたって知識ないので分からない)が、軟らかくて脂は少なめなんだけど旨味たっぷりな部位である。それを塩とバジルで味付けして焼いた感じで、第二丼だけでもビールを飲みたくなるんだけど、第一丼がある程度減ったらそこにバジル肉を投入して味代わりを楽しむという演出だった。
 試してみると、これがまたよく合う。イタリアンからオリーブオイルを抜いても成立してるような料理というか、どの国の料理とも言えないような不思議な無国籍塩ラーメンである。つうか、僕はもともとバジル味のパスタって好きだったんだけど、同じバジル料理でどっちか選べと言われたらこの塩バジルラーメンを選ぶ。鶏も豚も一級品なおかげでまるで脂っこくなくて、するすると腹に入ってく感じ。まるで腹にもたれないし、手間がかかるんじゃなかったらもう一杯頼みたいくらいだったなあ。


 せっかくの限定ラーメンだったので、持参のケータイのデジカメ機能でラーメン写真をぱしゃぱしゃ撮影。ネットにアップしてラオタ(ラーメンの好きな人たちはそう自称するのだそうな)とラー友(ラーメン好きの世界では同好の士をそう呼ぶのだそうな)たちにも見せたいと思ったのだ。
 普段は食べる前に撮るだけなんだけど、今日は味代わりの前後も撮っておきたいので、いつもより多くシャッターを切る……と思ったら、ケータイストラップから根付がぽろっと落ちた。
 趣味の木彫りで作ったくろべー根付、ストラップにする際にくろべーのシャンプー直後の毛を紡いだ紐を使ってとめてたんだけど、その紐玉がほつれちゃってたのだ。とりあえず根付は無事だったんでよかったけど、この留め方は無理があるかなーと思いつつラーメン屋を後にした。
 今日はちょっとしたイベントがあって、友人たちが出店したりワークショップを開いたりスタッフをしたりしてるというので、一通り回ってみようと思ってたのだ。出店の屋台は大賑わいの行列状態、ワークショップのブースは昼食休憩らしくて留守って状態で、天気のいい中でみんないい感じにお祭りを楽しんでるようだった。
 ぐるっと一回りした後、合流できたラーメン好きの友人に、いやーさっき行ったラーメンが美味かったーなんて話を吹き込む。ついでにケータイストラップの件を話すと、ほつれた紐玉を今日のワークショップで補修できるというか、改良することができるとのこと。絶妙のタイミングだなーと驚きつつ、そのワークショップに参加させてもらうことに。
 草木染めの羊毛を使い、テーマに沿って各種アクセサリーを作るっていうワークショップだったんだけど、僕は小さなテニスボールを作ってみることに。くろべー根付と組み合わせて使うもんなので、くろべーの好きなものがいいかと思ったのだ。
 ほつれたくろべー毛玉を芯にして、それを若草色の羊毛で包みこみ、専用の針でちくちくとフェルト加工。先生に教わりながらおっかなびっくりやってたけど、うまいこと黒い毛を覆ってテニスボールっぽい球形になっていくことに感心した。最近はやってるフエルト細工の手芸ってのはこういう仕組みだったのかー。
 テニスボールの柄に見せるためには白い羊毛を紡ぎつつ絡ませていくって感じで、どういう模様だったけなーと思い出しつつ再現していく。うまいこと立体化できたのは、黒いクラッシャー犬が何個となく噛みまくっては分解していく様を見てきたおかげだろうなあ。
 で、一般のお客さんが次々に訪れてはテーマに沿った作品を完成させて去っていく中、一人で別路線のものを目指して粘る。何倍もの時間をかけた結果、どーにか納得いくものできて満足。先生どうもお世話になりました。
 今後はこのミニミニテニスボールを活用して、くろべー根付と携帯電話をつないでおこうと思います。これまで黒と茶色だったものに鮮やかな色彩が加わるだけで、随分と雰囲気ちがうもんだねー。