最悪コンディション飼主と私設バリアフリー設備

数日前の、「何だいこりゃあ?」の顔

 腹痛・悪寒・発熱で寝込んで2日目。
 金曜朝、ちょっと頭いたくて胃がもたれたような感覚があって、二日酔いかなーなどと思いつつも出かけた。いろいろ用事があったからなんだけど、一通り済ませる頃にはちょっと腹痛いなーってなり、夕方に帰宅してくろべーの散歩をしおわった時には明らかに具合悪くなっていた。
 不思議なもんで、腹痛と膨満感はあるのに下したり戻したりってのはなく、やけに冷えるなーって感覚が強い。くろべーにドッグフードをやる頃にははっきり悪寒となってきたので寝巻に着替えて布団へ直行。食欲なんかまるでない。
 暖房も入れて電気毛布も最高温にしてるのに、ちっとも熱いとは思えないのが我ながら不思議。腹が痛くて四肢の先が冷える感覚で布団をかぶってたが、手先が痺れて体が震えだしたときにはさすがにヤバいと思って119番に電話した。
 最初に「消防ですか、救急ですか?」と尋ねられ、まあ消防じゃないから救急と答えた。すると続いて住所や症状をきかれ、正直に答えてたら「ああ、○○さんの別荘地ですか? なんとか管理事務所まで自力で出てこれませんか」なんて話に。いや無理だ。管理事務所までもカーブだらけの下り坂、手が震えてるのにハンドル握ったら危なくて仕方ない。ていうか、俺んちは救急車も来てくれないような僻地だったのか……
 まあ僕も救急搬送されたいわけではなかったので、「今すぐ搬送してくれってわけじゃなくて、こういう場合の応急処置を教えていただけないかと……」と伝えると、先方はちょっと拍子抜けしたように「ああ、それでは問合せということでいいですね?」とのこと。――僕は知らなかったが、119番につながったらまず「消防でも救急でもなく応急処置の問合せなんですが」と伝えると話が早いみたいだ。
 何はともあれ、応急処置として「まずは体を温めること、今の状況でも寒いなら、生姜湯みたいなものを飲むといい」と教えてもらった。「生姜ないっす、白湯でいいすか?」と確認しつつ、しょうがないって言葉はこういうのが語源なのかとふと思った。(違うけど)
 それでも、まあ白湯でもいいでしょうってことで、白湯を飲んだり薬飲んだりしたら、ちょっとはよくなってきた気がした。ひとまず眠りに落ちることはできて、夜の間に目が覚めたらだいぶましになっていた。


 そんな夜を過ごしての土曜日。朝になる頃には悪寒はかなり消えていたが、腹痛と四肢の痛みは増したようだ。ネットでちょっと調べてみたら、体のだるさとか関節の痛みはひどい風邪を引いた時の症状みたいだが、腹の痛みは盲腸炎の初期症状みたいである。電話で話した相手からは医者にいくよう進められるが、ここらは病院もあまりない&土日は休診のとこばかりだから月曜まで様子を見るってことにした。
 おまけに庭を見てみたら、我が家のあたりは雪まで積もっているではないか。なにはともあれ、こんな状況でくろべーの散歩に出かける気力体力はないので、朝の散歩は庭に解放で勘弁してもらうことに。
 ところで、うちは変な造りになっていて、狭い玄関→広いテラス→2段しかない階段→庭って順に外に出ることになっている。ところが、足腰が弱ってきたくろべーは、何故か2段の階段を一段一段のぼりおりするのを厭うようになった。階段を一段ずつ移動した方が楽だと思うのだが、何故かいつも躊躇の後で一息にジャンプして一気にテラスにのぼったり庭に下りたりするようになったのだ。
 足腰よわってるなら1段飛ばしの方がしんどいと思うのだが、以前中段でつるっとすべって隙間に後脚が落っこちたことがあるのでトラウマになってるのかもしれない。じゃあ階段を使わずに済むようにしてやろうと思い、僕がまだ元気だった頃にバリアフリー工事をしてやった。――まあそこそこの幅の板に支柱をつけてスロープにしたってだけなんだけど。
 これを使えば、階段で躊躇したり一段飛ばしに跳んだりすることなく、なだらかな坂をのぼりおりして移動できる。しかし、くろべーに試させてみたところ、なんだか落ち着かない顔つきで使うのを嫌がった。どうやら塗装された板のつるっとした感触が滑りそうで嫌ってことらしい、そこで古カーペットの切れっぱしを利用して、スロープを布張りにしてやった。
 これならくろべーも滑ることなく上り下りできる、のだが――やっぱり慣れない設備は嫌なのか、僕が横について指導してやらん限りはスロープを避けて「躊躇&一気跳び」をしたがるようだ。まあそのうち慣れてくれるかなーと、推移を見守ることにしていた。
 で、ここで体調最悪の雪の朝に話が戻る。――僕はくろべーと共に玄関を出て、庭を指さして力なく「行っといで」と声をかけた。散歩だったら首輪つけたり鍵しめたりを待つのがくろべーの習慣なのだが、僕がこういう態度の時は庭で自主的に散歩しろという合図である。
 一応、僕は玄関のとこに立ってくろべーの様子を見守るわけだが……この朝、自主散歩を済ませたくろべーは、日頃ほとんど使おうとしないスロープを利用して戻ってきた。
 単に積雪状況だとそっちの方が安全に思えたってことかもしれんが……「タケウチが具合悪そうだから気をつかってやろう」と思ってくれたのなら嬉しいなあ。