廃校の宝探しと至福の弾語り

下駄箱の上の宝の山♪

 近所の廃校で、市立図書館のリサイクルまつりってイベントが開催されている。
 市町村合併だの経年廃棄だの寄贈余りだので図書館から溢れた膨大な本を、元は中学だった廃校舎の1フロアにぶわーっと並べ、好きなもんを持ってっていいよっていう豪気な企画である。僕はもともと、ただ図書館の本を眺めてるだけで楽しいって人間だし、使われなくなった校舎ってロケーションもなんとも魅力的に思えてしまう。
 単に本がほしいならネットで探して注文ってのが一番手っ取り早いけど、こういうシチュエーションで無数の本と向かい合うってのは、探索と発見の喜びっを満喫できる宝探しなのである。――毎年春夏秋は山荘住まいで冬だけいろんなところに住むのが習慣となったおいらは引っ越しが多く、日頃はなるべく本は増やさないようにしてるのだが、元図書館の蔵書が探し放題もらい放題っていう企画となるとその魅力に抗えない。トレジャーハント気分で出かけていって、物色してるうちにあれもこれもと欲しくなり、ついつい我慢できずに一抱えもらってきちゃう……っていパターンを繰り返している。(実に1週間にわたって開かれてるのだ)
 廃校舎1階の、廊下と教室の床の上、机の上、棚の上に無数の段ボール箱が並び、その中にはぎっしり本が詰まっている。大まかに一般書と児童書の区別はあるけど、図書館ほどきっちり整理分類はされておらず、サイズや廃棄時期によってどかどかと箱詰めされているようだ。その冊数はざっと見て数百数千ではおさまらない。いったい何万冊あるんだろうなってくらいの本で、来場者はみんな、最初は1冊1冊丁寧に見てるんだけど、しまいに時間がいくらあっても足らないことに気付き、何となく気になる方向にふらふら歩くようになる。最初から「持ち帰る袋をご用意して参加ください」って広報されているのだが、袋が満杯になって帰る人も多いし、何袋も用意してきた強者は満杯袋を隅においてさらなる収穫に励んでいる。――無数の本とそこに群がる人々の姿を眺めてるだけでも、実に壮観。
 僕はというと、初日は一般書に絞り、中でも全集関係をメインで探して、『志ん生滑稽ばなし』『志ん生艶ばなし』『志ん生廓ばなし』の3冊と(村上豊画伯装丁が楽しいシリーズ)と、『日録20世紀』数十冊(資料として活用する予定)をゲット。どちらも全巻揃えることはできなかったが、それでも読んでて楽しい本である。他にも木彫りの本とか短編全集とか小説の資料になりそうな本とか、冗談抜きで一抱え。帰り際、帳面に年齢性別と持ち帰り冊数を書いてくよう言われたのだが、数えるのも面倒なので「100」と書いておいた。
 そして二日目は児童書をメインに見て周り、マガーク探偵団シリーズをまとめて発見したのが最大の収穫。今は書店では新装版しか手に入らなくなっちゃったけど、廃校舎でのリサイクル企画だけあって、20〜30年前に刊行されてた立派なハードカバーのものばかり17冊である。山口太一画伯のカラー表紙に裏表紙の主題歌漫画、これをお宝と言わずに何と言おう。

マガーク少年探偵団!(1)こちらマガーク探偵団

マガーク少年探偵団!(1)こちらマガーク探偵団

 まあハードカバーの1〜12巻までは発売当時に買ったのをもってるし、ネットで探しゃあ手頃な値段で買えるんだろうけど、こういう場所でこのシリーズを見つけたってのが嬉しい。なにしろ、僕に探索と発見の喜びってもんを教えてくれたのも、マガーク探偵団シリーズだもんね。単に金出して手に入れりゃいいってもんじゃなく、そこに発見の物語があることが嬉しいのだ。
 全18巻のうち、16冊を正面玄関付近で見つけた時は、全部は揃ってないのかーと残念だったし、1〜12巻は持ち帰りを遠慮しようかとも思ったが、いやいや探せばまだ見つかるかもしれないし、誰にも貰われずに処分されるよりは俺から誰かに渡すべきだと思いなおす。そして探索を続けた結果、3年1組前の廊下で『あやしい手紙』を発見。こういうのは嬉しいね。ここで見つかるのが図書館ストーリーでもある『あやしい手紙』であるってのがまたいい。
 残念ながら、日本での最終巻である『作戦名はマガークザウルス』だけ見つからなかったが、これは今後にコンプリートの楽しみを残しといたのだと思うことにする。
マガーク少年探偵団〈18〉作戦名はマガークザウルス

マガーク少年探偵団〈18〉作戦名はマガークザウルス

今日のところは『オウムどろぼう事件』が手に入っただけでもラッキーで、これは趣味でやってる翻訳の資料として使える巻なんだよね。――これを読んだ人の中には、円卓の騎士やその紋章についての描写がその後のエピソードと絡んでないように思った人もあるかもしれないが、実はそのあたりは、未邦訳のマガーク・ファンタジーシリーズの伏線なんだよね。ちょっとした言い回しも蕗沢忠枝風にして訳したいと思ったら欠かせないのが、この『オウムどろぼう事件』なのである。
マガーク少年探偵団〈17〉オウムどろぼう事件

マガーク少年探偵団〈17〉オウムどろぼう事件

 (そうそう、山荘の本棚におさめてある分も合わせると、1〜12巻まではダブって所有してることになったんで、欲しい方がいらしたら差し上げます。手渡しできる人なら只でいいし、何かおいらの欲しいものと交換だったら遠方でも可)
他にも、山中恒の児童読み物シリーズもいろいろゲットした。柳田国男が登場人物として出てくる本も見つけたので、廃校舎を出た後は近所のカフェに移動してのんびり食事&読書。宝探しの後、コーヒー飲みつつ本を読むのは至福の時間だね。


 至福の時間といえば、最近は一五一会を弾きつつ歌ってるのが妙に気持ち良くて、うずうずと一五一会を弾きたくなることが増えてきた。暗譜したレパートリーが増えるにつれ、くろべー散歩の最中とか温泉入ってる時とかに歌とコードを思い出してイメージトレーニングする習慣ができたんだけど、そうすっとうずうず弾きたくなってくるのだ。うろ覚えのとこも弾いてると思い出したりするし。
 前回は暗譜したのは7曲と書いたけど、その後『夢の中へ』はコード展開がシンプルな繰り返しだと気付いてすぐ覚えたし、ネットで『いい湯だな』の一五一会譜を見つけてすぐ覚えて『ドリフのビバノン節』(全員集合のエンディングで、カトちゃんが「歯みがけよ!」とか言ってた曲ね)として弾き語るようになった。記念すべき10曲目として『ぼくらが旅に出る理由』を覚え、今はユーミンの『春よ、来い』を覚えようと練習中。(ちなみに読点をとって『春よ来い』と書くとユーミンじゃなくみいちゃんの曲となる)
 弾き方としてはダウンストロークとアップストロークの繰り返しの中に休符を入れることを覚え、なんとなくそれっぽいなーと思えるようになってきた。しかし相変わらずピックを使うのが下で、指で弾いてる分には気持ち良く弾き語ってられるのに、ピックを使った途端に自分でも不快な音になる。弦にひっかかったついでにリズムが狂うこともしばしばで、なんでこんなに下手なのかなーと我ながら不思議。僕の周りの人に音来とピックを渡すと、初心者であっても割と普通に使ってんだけどなー。なんで俺はこんなに下手なんだろう。
 そうそう、一五一会といえば、音来を弾き慣れるにつれ、ベーシック一五一会や奏生も弾いてみたいなーって好奇心が膨らんでいる。こないだ通りかかったフリーマーケットで、奏生みたいな形の楽器が売られてるのを見かけた。何やらペイントされてるが形も大きさもよく似てて、すわお宝発見かーとドキドキしたのだが、近寄って見てみたら弦の数が妙に多い。これはマンドリンですかリュートですかと聞こうかとも思ったが、どっちにしろ弾けやしないので素通り。――どっかで安く奏生を売ってないかなー。

K.Yairi ヤイリ 奏生 NAT(ナチュラル)

K.Yairi ヤイリ 奏生 NAT(ナチュラル)