『ホラベンチャー!』と『BILLY BAT』と『STAR WARS』
午前中、新作長編『ホラベンチャー!』の追加シーンを書き上げてほっと一息。まだ細かな字句訂正や短縮はありそうだけど、とりあえず手直し終了で全体像がまとまった。
昼飯がてら出掛けて、『BILLY BAT』最新18巻を発売日に購入。信号待ちの運転席やホテルのプールのデッキチェアで読みふける。――この漫画、何度も読み返してるうちに浦沢作品で一番好きになってるのだ。漫画が重要なモチーフだけど、人類と物語とのかかわりを描いた作品ともいえるので、『ホラベンチャー!』を書く間もずいぶんと励まされたし。
- 作者: 浦沢直樹,長崎尚志
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/12/22
- メディア: コミック
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しかし、帯に書いてあった「最終章開幕」ってのはどう受け取ったらいいのかなあ。作者公式サイトでも1月から連載再開で「最終章」って言い方をしてたので、どうやら次の19巻で完結かと思ったんだけど、18巻だって最終章ならば、「20巻も21巻も最終章で、いつ終わるかはわかんないもんねー」ってことなのだろーか……
まあそれでも、18巻を読みながら、19巻で完結するとしたらどういう終わり方なのかなーと想像するのは面白い。――「世界各地のビリーランドを起点にテロ続発で第三次世界大戦が勃発しそうになる中、Wケヴィン共作のビリーバット新作が紙媒体で拡散され、陰謀を暴いて希望を説く。世界の読者たちが描いた落書きのビリーが実体化し、真田一族に伝わる写本の呪術(真似して描くと時々実現するの術)を打ち破り、ティミーの偽ビリーを駆逐。主のいなくなったビリーランドには本物ビリーとWケヴィンを先頭に民衆が入城、物語を通して世界の読者と連帯し、本当の意味で平和の拠点にしちゃう」なんてのはどーかな? いや、はずれてるだろーけど。
- 作者: フィル・スゾタック,リック・カーター,秋友克也
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2015/12/26
- メディア: 大型本
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で、僕は『STAR WARS』の新作を、封切り初日に3Dバージョンで鑑賞してきた。――もともと眼鏡をかけてる人はその眼鏡の上に偏光レンズのついた3D眼鏡をかける形になる。僕の眼鏡だと、形状的にBB−8デザインのものしか合わなかったんだけど、上映が始まって焦った。映像が立体にならずに二重になってぼやけてる感じで、何かレンズの相性のせいかと、片方外したり2つのレンズの距離を変えたり、客席でじたばたしてたんだけど……結局、上映がストップして明かりがつき、スタッフが出てきて映写ミスで映像が3Dになってないと謝った。そんで最初から上映し直したので、僕は冒頭部分を2回見たことになる。滅多にできない体験だったけど……上映終了後に責任者が謝るくらいのことはしたっていいんじゃないかなあ。
もっとも、映画そのものはたっぷり楽しんで満足だった。3Dで見たおかげで、画面が絵画的というより彫刻的に、空間構成を考えて作られてるのが分かったし、広い空間や奥行きのもたらす表現効果が素晴らしかったのだ。 広い空間にぽつんといる登場人物たちの立体映像がいろんな状況を物語ってるのを感じられた。スターデストロイヤーの残骸の中、一人でロープ降下するレイの登場シーンなんて、彼女の孤独と強さを象徴しつつ時代背景と世界観を示してるようで、すごく好きになった。
もともとEP2に出てきた、星図がふわっと立体映像で広がるシーンが大好きなんだけど、今回はそれを3Dで見られたようで嬉しかった。また、そのシーンのハン・ソロの表情がカッコいいんだよな。最後の最後でドロイドたちが得意気に(ちゃんとそう見える)ピースを埋めて星図を完成させるとこもいいし、全体に映像だけじゃなく芝居もよかったなと思う。みんな受けの芝居や臆する芝居がきっちりしてるから、決意した時の重みが伝わってくるんだよね。個人的にチューバッカのエヘヘ顔がツボだったし、BB8のサムアップやトルーパーのやれやれ放っとこう芝居も笑えたし。
何より、脈々と続く物語で、登場人物たちが時の流れや世代交代を経てかわっていく様ってのはいいなーと思う。それは『STAR WARS』にかぎった話じゃなく『BILLY BAT』にも、僭越ながら『ホラベンチャー!』にもあてはまることで、そういう物語たちにどっぷりひたれた数日間はとても充実してたなーと思う。