十冊の見本刷と二人の初読者

takeuchimakoto2006-02-03

 朝から宅配便で『オアシス』の見本刷りが届く。文庫本だし、僕にしては初めての“穏当な厚さ”の本でもあるので、10冊送ってもらったわけりには意外と小さい包みである。
 第一稿を書いてから7年近くたってようやく本になったわけで、やはり感慨深い。イラストと本文のレイアウトに関しては結構苦労したし、はた万次郎画伯のイラストをこれだけ盛り込んだ小説ってのも空前絶後だろうし。
 早速献本というか、お世話になってる方々や年賀状をくれた方などに発送するための作業。昼前に車で買い出しに行く時に本と手帳と一筆箋を持参、スーパーで封筒を買って図書館やパン屋の食事席で宛名&手紙書き。封入して近くの郵便局へ。
 その途中、犬の散歩仲間のご近所さんと遭遇。ミニチュアダックスのボンの飼い主の奥さんである。2月に犬の小説を出すよって話を前にしたことがあるので、丁度いいやと一冊プレゼント。「楽しみにしてたのよ、早速読むわ」なんて言ってくれたのは社交辞令もあるんだろうけど、郵便局まで歩きながらふと思う。
 なにしろ見本刷だし、発売日は2月10日だそうだから、まだ世の中には出回ってない本なわけである。仮に今の奥さんが帰宅してすぐに読んだら最初の読者ってことになるのかもしれない。……たしか息子さんが僕とほぼ同い年とか仰ってた方だけど、書いてる時はそういう年代の第一読者なんて想像もしていなかった。
 『オアシス』執筆に集中して忙しかったとき、僕が当時住んでた世田谷のアパートまで飯を作りに来てくれた女の子に途中まで読んでもらったっけなーなんてことをふと思い出す。婚約者と別れて荒れていた彼女もその後めでたく別の相手と結婚し、何年か後に会ったときにはすっかり僕の顔を忘れてたっけなーなんて思い出し、時の流れってのは面白いもんだなあとしみじみ。


 てなわけで、もうすぐ発売の『オアシス』も現在執筆中(今日はさぼったけど)の『ワンダー・ドッグ』も、主人公は犬で時の流れってのが大きな役割を果たしております。皆さんよろしければお読みください。