暖炉のスモークと海辺のカフカ

燻すと発色するベーコンの赤色

 やけに天気よくてあったかいけど、朝から暖炉に火を入れる。燃やすのは桜の薪。
 昨日スーパーで美味そうな塩紅鮭の切り身と豚肩ロースとんかつ用ってのを買ったので、暖炉でスモークすることにしたのだ。朝食は炊きたてごはんにスモーク風焼鮭も焼きたて、それがあまりに美味かったので余分に焼いて昼はそれを具にしたおにぎり(〆切前の追い込みなので仕事部屋に持ち込んで食べる)、夜は自家製焼きたてベーコンで採れたてホップ一番搾りの晩酌って感じで、資金は少ないわりにかなり贅沢な食事となる。
 備蓄しといた桜材のチップ(というか、用は薪割りや木彫りの際に出る削り屑))は使い切っちゃったけど、家の中でアウトドアできるのがオンボロ山荘の暖炉生活の醍醐味だ。天気いいうちに来年用の薪の準備に励んだり、趣味の木彫りに精を出したりしてまたスモーク素材を貯めていこうと思う。


 天気いいので、午後はくろべーをふんづかまえて風呂場でシャンプー。こっちも裸になってがしがし洗うので、寒い時期にはやりたくない家事なのだ。風呂場じゅう黒い抜毛と犬くささが満ちるしね……
 シャンプー後にそのまま天日干しを兼ねて散歩へ。帰宅すると夕方なのでいつもより暖房を強めに設定してファンヒータードライ。温風に敏感なくろべーは暖房機器と僕の間に陣取る傾向があるので、それをドライヤー代わりに使ってかわかした。
 こうなると仕事に戻る気も起きず、サラダとベーコンを肴にいつもより早く飲み始める。酔った勢いで6時台に布団読書に突入、やがてとろとろ寝入って夜10時すぎに起きてテレビつけて「レッドシアター」を見て、その後日付かわるまで読書して……って感じで一日が終わる。
 ちなみに読んでいるのは『海辺のカフカ』。かつて『図書館の水脈』執筆時に深く深くコミットした感覚のある作品だけど、その後も個人的にこの作品を思い出す出来事が多くて(他の仕事の時とか、恋愛方面とか……)、ふっと再読したくなったのである。
 読んでいくうちに主人公が森の中のキャビンで暮らすシーンが出てきて、今頃になって気づいた。──僕が森の中の家に引っ越してこういう暮らしを始めたのって、『海辺のカフカ』の影響も大きかったんじゃなかろーか?
 直接的には、はた万次郎画伯の影響で犬と田舎暮らしっていう状況に憧れたり、それで最初に住みはじめた千葉の田舎がどーも気に入らなかったり、繋がずに飼えるところってことで周りに人家のないような辺鄙な物件を選んだりってことで今の山小屋に住んでるわけだけど、無意識的に『カフカ』の影響を受けてたって不思議はない。というか、今までそのことを考えもしなかったのが我ながら迂闊だよなあ。